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ソフトバンク飯田コーチの“大異動”。
守備走塁から打撃、その意図とは?
posted2016/11/11 07:00
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
NIKKAN SPORTS
オフに突入し、異例の大シャッフルが行われたホークス首脳陣。
留任は工藤公康監督をはじめ7名のみ。新任は6名、そして配置転換は13名にも及んだ。
注目が集まりがちなのは、工藤政権の下で初めて設置されるヘッドコーチに達川光男コーチが就任した点だろうが、じつはその陰でホークス野球の根幹を改革すべく実行された“異動”に注目したい。
飯田哲也二軍打撃コーチ。今季まで一軍で外野守備走塁を指導してきた男の転身はとても興味深く感じた。
そもそも専門職であるプロ野球のコーチにおいて、守備走塁部門と打撃部門を行き来する例はあまりない。また、飯田コーチといえば、現役時代もヤクルト黄金期の「1番センター」として活躍してゴールデングラブ賞7回や通算234盗塁の輝かしい実績を残しており、正直「打撃コーチ」という肩書がピンと来なかった。
「僕も初めは驚きました。でも、工藤監督からは『バントや右打ちなど、小技をしっかり教えてやってほしい』と言われていますからね」
王監督が伝え続けてきた“直球を仕留める”美学。
ホークスに新しい風を吹き込ませる。
それが明確な役割だ。
ホークスといえば、強力打線とのイメージが強い。それは一つの美学がチームの中に息づいていることが関係しているからだ。
<ストレートを一発で仕留める>
強い球を確実にとらえる技術と振り負けない力強さを兼ね備えなさい――まだホークスが常勝軍団と呼ばれる前、当時の王貞治監督が、若き日の小久保裕紀や松中信彦や城島健司に口酸っぱく言い続けた金言だった。
その言葉を胸に刻み精進し続けた彼らは、球界を代表する強打者となった。同時にチームが強くなったことで、ベテランから若手へと受け継がれる良き伝統となったのは自然な流れである。