スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
108年ぶりのワールドシリーズ制覇。
カブス戴冠と王朝の予感。
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byAFLO
posted2016/11/05 11:00
ワールドシリーズ史上に残る大激戦。勝利への執念が少しだけ上回ったのは1世紀の時を超えたカブスの方だった。
リードをしたら、早めにミラーを投入する継投策。
だがフランコーナは、「リードをしたら、早めにミラーを投入する」という果敢な継投策を作り上げた。これなら、先発が4回か5回までもてばよい。ポストシーズンでも、ミラーの早期投入は大成功を収めた。ALDS(対レッドソックス)では2試合/4回を投げて自責点0。ALCS(対ブルージェイズ)では4試合/7回3分の2を投げて、またも自責点0。そしてワールドシリーズ第6戦までは、3試合/5回3分の1を投げて自責点1。ここまでのトータルは、17回を投げて自責点1、防御率0.53というめざましい成績だった。
大黒柱のクルーバーも、第6戦までは、ポストシーズン5戦に先発して防御率が0.89だった。ALDSが1試合/7回を投げて無失点、ALCSが2試合/11回3分の1を投げて自責点2、ワールドシリーズが2試合/12回を投げて自責点1。これまた難攻不落に見える投球だった。
第7戦、カブスは難攻不落のふたりを攻略した。
ところが第7戦、カブスはこの難敵ふたりを攻略した。
まず、先発クルーバーが、デクスター・ファウラーに先頭打者本塁打を許した。その後も、ぴりっとしない。フライアウトは取れるものの、第1戦の魔術的な投球が影を潜め、4回にはアディソン・ラッセルの犠飛とウィルソン・コントレラスの二塁打で2点を失い、5回にはこのところ沈黙していたハビエ・バエスに手痛い本塁打を浴びた。これで4対1。フランコーナはここでミラーを投入するが、後手にまわった感は否めない。
そのミラーも、昨日までのミラーではなかった。5回にはアンソニー・リゾに適時打を許し、6回にはこの試合を限りに引退するデヴィッド・ロスに中越え本塁打を浴びてしまったのだ。ポストシーズン奪三振記録を30まで伸ばしたのは立派だったが、この試合に限れば2回3分の1を投げて2失点。ついに神通力が途切れたかと思わせる内容だった。
ただ、インディアンスもさすがにしぶとかった。攻めあぐねていたカイル・ヘンドリクスが4回2死を取ったところで降板すると(ジョー・マドン監督にしてはややせっかちな交代だった)、リリーフのジョン・レスターとアロルディス・チャップマンに襲いかかり、8回裏に6対6の同点に追いつくのだ。が、抵抗もここまでだった。10回表、2点をもぎ取ったカブスはその裏の反撃を1点に抑え、1908年以来のワールドチャンピオンに輝いたのだ。