スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
108年ぶりのワールドシリーズ制覇。
カブス戴冠と王朝の予感。
posted2016/11/05 11:00
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
AFLO
カブスが勝った。2016年のワールドシリーズを制覇した。108年ぶりの戴冠だ。4戦目で1勝3敗となったときは、もはやこれまでかと思った。氷河期がまだつづくのか、とも思った。
だが、首の皮一枚を残してカブスは踏ん張った。第5戦、第6戦と連勝してタイに漕ぎ着け、最終戦で勝利をもぎ取った。
それにしても、どっちに転ぶかわからないシリーズだった。先発投手の枚数、打線の破壊力など、総合的な戦力ではカブスが上と見られていた。だが第1戦、インディアンスはエースのコーリー・クルーバーが超絶的な投球を見せた。立ち上がりの3回で、彼は8三振を奪った。シンカーが面白いように決まり、カブスの打者は、空振りの山というより見逃しの山を築いた。ノーチャンスと呼ぶほかない負け方だった。カブス、0対6の敗戦。
インディアンスは主力投手が戦線離脱していたが……。
第3戦ではアンドルー・ミラーがカブス打線の前に立ちはだかった。ミラーは5回途中から登板した。通常は7回以降の男だが、インディアンスのテリー・フランコーナ監督は、勝負の山場が早く訪れると読んでいた。
読みは当たった。ミラーは4人の打者から3三振を奪って、完璧に役割を果たした。カブス打線は手が出なかった。ストライクがボールに見え、ボールがストライクに見えているようだった。クローザーのコーディ・アレンも、4人の打者から3三振を奪ってカブスを零封した。カブス、0対1の敗戦。
これはちょっと、と私は思った。クルーバーが投げる試合には勝てなくても、他の先発投手なら打ち崩せるだろう、と読んでいたからだ。なにしろインディアンスは、シーズン終盤の9月に入ってから、カルロス・カラスコとダニー・サラザーというふたりの10勝投手が故障で戦線を離脱してしまったのだ。