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カブスの“人を助ける男”の物語。
愛と友情のバットで主砲が復活。

posted2016/11/01 11:00

 
カブスの“人を助ける男”の物語。愛と友情のバットで主砲が復活。<Number Web> photograph by AFLO

今季32本塁打、109打点の主砲リゾはシーザーと同い年の27歳。チーム浮沈のカギを握る3番打者だ。

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ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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 不振に喘ぐ主砲を救ったのは、愛と友情のバットだった――。

 ドジャースの2勝1敗で迎えたナショナル・リーグ優勝決定シリーズ第4戦の5回表、第3戦までポストシーズン7試合で26打数2安打、0本塁打0打点の悩めるカブスの3番アンソニー・リゾが打席に入った。手にしたバットには“Rizzo”という名前もなければ、彼の背番号“44”の刻印もなかった。あるのは“Szczur”という文字と、グリップエンドに白いマジックで書かれた“20”のみだった。

「少し気分を変えて打席に立ちたいと思ったからなんだけど、実はシーズン中から時々、彼のバットを借りて打っていたんだ」

 と、試合後のリゾ。「彼」とは同僚で「ムネリン」こと川崎宗則同様、ポストシーズンの出場登録枠から外れながらもベンチ入りを許されたマット・シーザー外野手のことだ。20はもちろん、シーザーの背番号である。

借り物のバットで、ソロホームランを叩き込んだ。

 チームメイトのバットを借りて打席に立ったリゾは、フルカウントからの6球目、時速98マイル(約158km)の速球を捉えて右越えにソロ本塁打を叩き込んだ。

 チームが0-6で敗れた前夜、第3戦の最終打席もリゾはシーザーのバットを借りて打席に入っていたと明かした。

 相手投手のジャンセンは今季47セーブを挙げた、ナ・リーグ屈指のクローザー。投球のほとんどがカット・ファストボールで、左打者の懐深くえぐり込んでくる超高速の変化球が持ち味だ。3球目、リゾは時速94マイル(約151キロ)のカッターに、借り物のバットを木っ端微塵にされた。ところが打球は極端な左打者シフトを敷いていたドジャース内野陣の前にコロコロと転がり、内野安打となった。

「(折れた)バットがリゾの脚にも当たったように見えたから、ドジャースの連中はファールだと思ったんじゃないかな。どっちにしろ、これでリゾがしゃんとすればいいと思うよ」

 ところがリゾは、すぐには「しゃん」としなかった。冒頭の第4戦の最初の2打席は自分のバットを使って連続三振。前夜の内野安打を入れてもポストシーズン計28打数2安打と不調が続いた。ここはもう一度、シーザーのバットに頼るしかない。

【次ページ】 「言ってみれば、愛と友情のバットってところだね」

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マット・シーザー

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