プロ野球亭日乗BACK NUMBER
“仕掛けずバント”の広島は怖くない。
崖っぷちの今こそ赤ヘル野球を貫け。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2016/10/28 13:25
シーズンで2位を100点近く引き離した広島の得点力は、大胆な攻撃があればこそだったはずだ。本拠地での復活に期待したい。
先頭打者が出た13回中、7回バントを選択している。
「(9回裏に)中崎をいかせることは決めていたし、長いイニングも考えていた。リードするところ(リード面を考えて)で、石原にそのままいってもらった。石原も全然打てないとは思っていない」(緒方監督)
要は守りを考えてのベンチワークだったのだ。ただ、点を取らなければ勝てない場面だった。1点をもぎ取るために走者を得点圏に進めながら、中途半端に守りに足をかけながらの采配は、シーズン中と違ってあまりに消極的ではなかったか。結果的には、ここで1点を奪いきれなかったことが、その裏のサヨナラ負けに繋がったともいえるわけだ。
実は今シリーズのここまで5試合で、広島は13回先頭打者が出塁している。そのうち第3戦の9回無死三塁以外、送りバントが選択肢になる12回のケースで犠打のサインが出たのは7度で成功は4回だった。
確実に送る野球はもちろん必要だが、今季の広島はここでエンドランや盗塁と仕掛けて勝ってきたチームである。
ホームスチールで大谷から点を奪った初戦を思い出せ。
「もう少し機動力を使った攻撃をしたかったですが、やっぱり短期決戦は1点、1点かなと思った」
こう語っていたのは、CSのときの緒方監督だった。序盤に送らなかったCSの第3戦で唯一の黒星を喫したのがトラウマになったのか、それ以降は日本シリーズでも手堅い作戦、送りバントを多用するケースが目立っている。
ただ、そういう「よそ行きの野球」に選手が戸惑い、それがチームのリズムを壊しているようにも映るのだ。
思い出して欲しい。
初戦は2回1死一、三塁からセーフティースクイズで揺さぶり、最後はダブルスチールを仕掛けた本盗で大谷翔平から先取点を奪った。第2戦も同点の6回無死二塁からバントのサインが出ていたにもかかわらず、菊池涼介が自分の判断でバスターに切り替えて勝ち越し点をもぎ取っている。
これが今季の赤ヘル野球なはずだ。