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スタン・ハンセンから愛する日本へ。
ファイトスタイルと素顔のギャップ。

posted2016/10/16 08:00

 
スタン・ハンセンから愛する日本へ。ファイトスタイルと素顔のギャップ。<Number Web> photograph by Wataru Sato

テンガロンハットに、テキサス・ロングホーンポーズ。ハンセンがまとう空気は、年を重ねても変わらない。

text by

濱口陽輔

濱口陽輔Yosuke Hamaguchi

PROFILE

photograph by

Wataru Sato

 スタン・ハンセンは紛れもなく怪物のように強かった。

 思い返せば、私が初めて深夜の全日本プロレス中継で見た全日本プロレスは『四天王プロレス』の時代だった。三沢光晴、川田利明らがリングの中心にいた。時代は変わっても四天王の壁であり続けたハンセンは、既にキャリアの晩年だったのだろう。それでもウエスタンラリアットで三沢や川田をなぎ倒す姿は鮮明に記憶している。

 本書では現役時代に多くを語らなかったハンセンの情熱・責任感・感謝の気持ちが溢れている。かつてのファイトスタイルからは想像できないほど穏やかに語る男の引き際、闘うべきことは何か。日本でヒールを超越し人気を得た男の人生哲学を自身の回想からひも解く。

プロレスの歴史上最も人気を得た外国人レスラー。

『日は、また昇る。』はプロレス引退から14年を経て日本向けに書き下ろした愛情が込められた著書である。

 スタン・ハンセンはプロレス界の長い歴史の中で、最も人気を得た外国人レスラーと言っても過言ではないだろう。自身の人生を振り返りながら、単純に勝ち負けで評価されることのないプロレスという特殊な世界でチャンスをつかみ、異国の日本でトップにのし上がった。

 そしてトップを維持するための努力を積み上げ、プロレスラー「スタン・ハンセン」がいかに形成されたかが書かれている。

 まず最初に感謝を伝えている相手が、テリー・ファンクだ。今でも年に2~3回、夜も深まったころに電話をするという。元々フットボウラーで、後に挫折し、地理教師をしていたハンセンをプロレスの世界に引き込んだのはテリー・ファンクである。

『ありがとう』

 何度もこの言葉が出てくる。プロレスと出会えて素晴らしい人生だったと彼は言う。ハンセンにとってのプロレスとは何か。

【次ページ】 ブッチャーやジェット・シンの真似ではなく……。

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