サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
清武弘嗣が乗り越えたハリルの規律。
自由さで示した“攻撃の道筋”とは。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byTakuya Sugiyama
posted2016/10/14 11:00
清武弘嗣が2アシストで鮮烈な代表デビューを果たしたのが2011年。5年後にスタメンに定着できていないとは誰が想像しただろうか。
プロサッカー選手が、ベンチ外に納得するはずがない。
しかし、幾らライバルがナスリだと言っても、ベンチスタートやベンチ外という現状に清武が納得できるはずはない。なぜなら彼がプロサッカー選手だからだ。レギュラーの座を掴めないという日々は、清武にとってプロになって初めての経験だろう。
「毎日レベルの高い競争ができているし、良いトレーニングもやれている。でも試合に出られないもどかしさも味わっている。試合数が多いと、チームの練習はどうしてもコンディション調整のメニューが多くなる。そういうなかで、自分で考えてトレーニングをしなくちゃいけない部分も増えました」
いかに良いコンディションを保っていくのか。それは身体だけでなく、メンタル面でも同様だ。
ベンチ外という現実はひどく清武を落ち込ませた。承知の上だった厳しい競争……しかし、実際にその立場を思い知らされ、自分を支える自信をいかに保っていくか、新たな挑戦の過酷さを味わった。だからこそ、フレッシュな気持ちで、もうひとつのチームでの戦いに挑もうと決めた。
「代表へ向けて、気持ちを切り替える」
ネガティブな感情を振り払い、清武は日本代表へ合流した。
イラク戦の決勝点を生んだ清武のFK。
「引き分けだったら本当にヤバかったし、勝てて良かった。今日の試合はそれに尽きる」
10月6日、W杯アジア最終予選対イラク戦。ロスタイムでの山口の劇的弾で勝ち点3を掴んだ日本代表。その得点の起点となるFKを蹴った清武は、この日はトップ下のポジションで先発。原口の先制点のアシストも彼の仕事だった。
いったん本田にパスを預けて、その本田を追い越し、角度のないところで中央にクロスボールを入れる。
「アジアレベルのDFだと、ああいう風に出して追い越してという動きにはついて来ない。わかっていたことだけれど、元気が決めてくれて良かった」