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「大宮=アトレティコ」という仮説。
最後の一押しは、監督の黒シャツ!?
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2016/10/03 12:20
昨年J2優勝を牽引した“大宮のグリエスマン”家長昭博は今季もJ1で10得点。ハリルが会見で言及したこともあり、代表復帰はあるか!?
家長とムルジャが高い位置でプレスを担当。
「しっかりブロックを組むところは、組む。だけど、行けるところでは前からプレッシャーをかけようと。今日はアキ(家長昭博)とムルジャが前からプレッシャーをかけてくれたことで、ズルズル引くことがなかった」
こう語るのは、オブラクのごとく至近距離からのシュートに素早く反応し、最後尾からチームを支えたGK塩田仁史だ。彼が言うように、特に前半の大宮は、鹿島のビルドアップの体勢が十分でないと見るや、家長とムルジャが相手センターバックを執拗に追い回し、高い位置でボールを奪うことに成功した。相手と試合の状況を見極めて、前線からのプレッシングとリトリート(後方に下がって守る守備)を的確に使い分ける。これもアトレティコとの共通点だろう。
家長から始まる速攻の仕組みもアトレティコ仕様。
果敢に「前へ出る」姿勢は、なにも守備面に限ったことではない。ボールを奪えば、勇気を持って相手ゴールへ走り出す。その速攻の仕組みもまた、アトレティコに似ている。
まずマイボールになった瞬間、“大宮のグリエスマン”家長がスペースに動き出し、パスを引き出す。彼が技術と体の強さを活かしてボールをキープする間に“大宮のサウール”江坂任と、“大宮のカラスコ”泉澤仁がサポートに走り、厚みをもたらす。
さらに、相手ゴール前へ飛び込むのは2トップとMFの選手だけじゃない。
「(渋谷洋樹)監督からも『ゴール前にどんどん入って行け』と言われていますから。(先制点の場面では)ゴール前の中央のエリアにボールが入った時点で、こぼれ球への準備はできていた」
開始13分、待望の先制ゴールを決めたのは“大宮のフアンフラン”こと右サイドバックの奥井諒だった。大山啓輔のシュートをぴたりとトラップし、そのまま右足でゴールネットを揺らした。彼はチャンスと見るや、一気にピッチを駆け上がり、クロスを供給するだけでなくゴール前にも進入する。指揮官もそれを推奨している。