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石川直宏が愛される最高の組合せ。
柔和さと、リミッターを越える感情。

posted2016/09/29 11:00

 
石川直宏が愛される最高の組合せ。柔和さと、リミッターを越える感情。<Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTOS

石川直宏ほど、バンディエラという言葉が似合う選手はJリーグを見渡してもそうはいない。存在そのものがクラブの宝なのだ。

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西川結城

西川結城Yuki Nishikawa

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J.LEAGUE PHOTOS

 たくさんの人たちから、思いを託される男である。

 FC東京に関わる人々にとって、石川直宏という選手は特別な存在だ。サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で14年からFC東京担当を務めてきて、今年で3年目。直接、日々の石川の姿を目にする中で、彼が愛される理由がわかってきた。

 誰にでも分け隔てなく接する好感。雨の日も風の日も、練習場にかけつけたサポーターに対してファンサービスを行う実直さ。そして視線を合わせる誰に対しても、爽やかな笑顔を見せるのである。

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 それでいて、一度ピッチに立てば思い切り疾走し、相手ゴールに向かって行く迫力。柔和な素顔と、気持ちが前面に出るプレー。この最高のマッチングこそが、石川が愛される理由なのである。

石川の頭によぎった、引退の二文字。

 その石川が昨年8月、34歳にして選手生命を左右する大ケガを負った。遠征先のドイツ・フランクフルトで試合中に負傷。左膝前十字靭帯断裂という、最悪の事態に見舞われたのだ。

 これまでも、ケガに泣いてきた過去を持つ。'09年には得点を量産し、J1ベストイレブンに選出。この年には約5年半ぶりに日本代表にも復帰し、翌年に控えた南アフリカW杯を戦うチームの切り札として期待もされた。しかし、好調のさなかで負傷離脱。代表でのアピールの機会も失ってしまい、W杯では予備登録メンバー止まりとなってしまった。

 そんな辛苦を経験し尽くしてきた石川にとっても、今回のケガは重たい出来事だった。

「若い時にケガをして、また治してということとはわけが違う。あと、ここ数年は連続して試合出場できたシーズンが少なかったけど、去年は久しぶりにシーズン初めから試合に絡んでゴールも取っていた。ここからという時のケガで、靭帯を断裂。自分の中でダメージが大きかったし、一度は辞めることも考えました」

 一瞬頭をよぎった、引退の二文字。その迷いを何とか掻き消し、再起への一歩を踏み出す。

 長いリハビリが始まった。練習場で汗を流す仲間を横目に、室内での苦しい作業が続く。それでも印象的だったのは、我々の前に顔を出せば、いつだってスマイルで応えてくれたこと。

【次ページ】 決断は自分の意地、しかし支えになったのは周囲の助け。

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