オフサイド・トリップBACK NUMBER
自分たちのサッカー後遺症の先へ。
代表の理想を再び語る絶対条件。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byTakuya Sugiyama
posted2016/09/25 11:00
日本代表の戦術を語ること自体がトラウマになっているのだとしたら、それはサッカーの楽しみも大きく損なうことになる。
サイドに早く展開したとして、その次は?
サイドアタックの方法も同じだ。
日本代表の選手たちが各駅停車のビルドアップではなく、両サイドの深い位置に、もっと頻繁にロングフィードをするようになったと仮定しよう。
しかし真に重要なのは、そこからの崩し方だ。クロスを上げるならば高さのあるフォワードが不可欠になるし、グラウンダーでマイナスに折り返すならば、攻撃的ミッドフィルダーは確実にゴール前に顔を出していなければならない。
さすがにそこまでのスピードはないということで手数をかけ始めると、敵の守備陣はあっという間に戻ってきてしまう。縦に速いサッカーと一口に言っても、解決しなければいけない問題は山ほどある。
W杯最終予選を戦いながら大局を論じるというのは、容易な作業ではない。W杯行きのチケットを手にするためには、目の前の勝ち点3を奪うことに何よりも集中することが求められる。とりわけ10月11日のオーストラリア戦は、最終予選序盤の大一番になってくるはずだ。
オシムは「走りながら考える」と言った。
しかし、だからこそあえて長期的な視点で、議論を重ねて行く必要がある。そのプロセスがなければ、日本サッカー界全体がすぐに手詰まりに陥り、世界に勝つための指針と具体的なアイディアが見えなくなるからだ。ハリルホジッチ監督自身、メディアやファンが真に有益で建設的なアイディアを交換するのを望んでいるに違いない。
かつてオシムは「サッカーでは、がむしゃらに走ればいいというものではない。重要なのは走りながら考えることだ」と説いた。オシムに寄せて言うなら、日本サッカー界は「目の前の勝ち点3をかけてがむしゃらに戦いながらも、自らが目指すべきサッカーの姿を、体系的に考えていく必要がある」ということになる。
17戦4勝3分け10敗。これがW杯における日本の通算成績だ。
2年後のW杯ロシア大会、ひいては6年後のカタール大会で白星を重ねられるか否かは、いかに自分たちのありようを冷静に見つめ、「自分たちのサッカー」について真剣に議論を重ねていくかにかかっている。