“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
アジアは日本を特別視してない――。
“久保世代”U-16指揮官が語る実状。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byAFLO
posted2016/09/16 07:00
各メディアでは久保建英の動向に注目が大きく集まっている。しかしサッカーは11人プラスアルファの力を結集して戦う競技である。
「今後大化けする選手が試合に出れていない年代」
タイトルの懸かったアンダー代表がもう1年継続すると言うことは、アジア最終予選を経験した選手が、さらに高いモチベーションで世界を目指す一方で、アジア最終予選の段階で台頭してこなかった選手が一気に台頭し、そのまま最終予選メンバーを押しのけてW杯に出場を果たすチャンスも生み出す。2011年のU-17W杯メキシコ大会で日本がベスト8に入ったときも、DF室屋成が無名の存在から一気に台頭し、活躍してみせた。
「どうしても高1の年代は早熟系の選手が多い。裏を返せば、今後大化けする選手がまだ所属チームで試合に出れていない年代でもあるので、まだ全体を把握しきれていない年代とも言えます。高2になると晩熟型の大物が出て来ると思う。そういった選手を吸い上げるためにも、まずはアジア最終予選を突破して、U-17W杯に出ないといけない」(森山監督)
年代別W杯の喪失は、W杯だけでなく、そこに至るまでの“本気で世界を意識した”サバイバルレースをも失ってしまう。大きな成長を掴む多くのチャンスを逸する代償はあまりにも大きく、将来U-19、U-23、そしてA代表に上って行くに連れ、“世界の舞台での経験不足”として大きな足かせとなる。
「育成年代でより成長速度を上げないと、上では通用しない。我々スタッフが選手たちに“成長速度を上げろ”と常に言っていますが、こっちもそれを著しく高めることが出来る舞台を用意してあげたい。それがW杯なんです。W杯出場権を失うことは、その外的要因を著しく失う結果となるのです」
強いA代表の下には、強固な土台が存在する。
森山監督の言葉は最後まで熱く、そして重要なものであった。
選手が掴み取る経験値。それは若い選手であればあるほど、より大きな刺激となり、飛躍的な成長を遂げる土台となる。そのきっかけを与え続けることこそが、育成年代で重要なことであり、“井の中の蛙”が大海を知り、さらにその大海の向こう側へ到達しようと意欲と行動を起こす。その最初の大きなきっかけとなるのが、U-17W杯だ。そこからU-20W杯を経て行くことで、継続した経験値を重ねる強化の道筋が見えて来る。
たかが16歳以下の代表のアジア予選ではない。16歳以下だからこそ、より濃い経験が必要になる。強いA代表の下には、強固な土台が存在する。その土台を作り上げようとしている彼らの戦いは、決して他人事ではないことをここで強調しておきたい。
U-17W杯出場を懸けた若き日本代表の戦いは、9月16日のU-16ベトナム代表戦から熱戦の幕が切って落とされる。