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アジアは日本を特別視してない――。
“久保世代”U-16指揮官が語る実状。 

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安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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posted2016/09/16 07:00

アジアは日本を特別視してない――。“久保世代”U-16指揮官が語る実状。<Number Web> photograph by AFLO

各メディアでは久保建英の動向に注目が大きく集まっている。しかしサッカーは11人プラスアルファの力を結集して戦う競技である。

過剰なリスペクトは南アW杯をピークに薄らいでいる。

 今回のチームを率いる森山佳郎監督は、AFC U-16選手権メンバーを発表する際、こうU-17W杯出場の重要性を説いた。前述したアジアのレベルアップの要因の一つとして、森山監督が指摘したように、“日本に対する過剰なリスペクト”が薄れて来たことが挙げられる。フランスW杯以降から振り返れば、日本は日韓W杯、南アフリカW杯での決勝トーナメント進出を果たした。そして本田圭佑、香川真司ら個人レベルでも海外リーグで活躍を見せている。

 これらの要素から日本は各国から“アジアの強国”として必要以上にリスペクトされた結果、臆する相手に試合を優位に運べた。だが、それは南アフリカW杯がピークだった。以降、日本に対する過剰なリスペクトは薄らぎ、韓国、オーストラリア以外でも、若いうちから世界を経験したアジアの国の選手たちが日本戦でも堂々としたプレーを見せるようになった。それが’15年のアジアカップの敗戦や9月のUAE戦での敗戦など、A代表にも決して偶然ではない結果に繋がっているのも事実だ。さらに森山監督はこう続けた。

アジアで負けると、継続した強化の形が取れない。

「ここ(アジア最終予選)で負けると、残念ながら今のところ継続した強化の形が取れていない。このターゲットエイジが負けてしまったら、その年代の翌年以降の強化が尻すぼみになる。まだ出て来ていない晩熟型の大物を吸い上げるためには、やっぱりもう1年間くらい待たないといけない。今回最終予選に行けなかった選手、代表活動にすら絡めなかった選手でも、また1年後のW杯という目標が有ると、そのためにモチベーションを持って努力を重ねたり、W杯に向けた海外遠征の経験もまた貴重な財産になる」

「つまり、W杯だけでなく、そこを本気で目指す過程も成長するための重要な財産です。その重要な機会も、負けてしまったら著しく減ってしまう。尻すぼみになってしまうんです。だからこそ、W杯には絶対に出ないといけない。本来はたとえアジア予選で負けたとしても、尻すぼみにならないようにやっていかないといけない話なのですが、現状ではそういう形になっていないので、絶対に勝ってW杯に出ないといけない」

 まさしくその通りで、日本が年代別W杯の出場権を失うということは、ただでさえ少ない世界での経験が皆無になってしまう。確かにW杯に出なくても、年代別代表を結成し、海外遠征を行うことで経験面も含めた強化も出来ないことはない。しかし、日本は極東に位置する島国だけに、頻繁に海外遠征を出来る地理的環境ではないし、何より選手が一番成長をする“タイトルが懸かった真剣勝負の場”での経験を得るためには、それこそW杯出場とそこに至るまでのサバイバルレースが重要であることは容易に想像出来るだろう。

【次ページ】 「今後大化けする選手が試合に出れていない年代」

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森山佳郎

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