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盆と正月がいっぺんにやってきた?
プチ鹿島8月のスポーツ新聞時評。 

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プチ鹿島

プチ鹿島Petit Kashima

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photograph byJMPA

posted2016/09/01 08:00

盆と正月がいっぺんにやってきた?プチ鹿島8月のスポーツ新聞時評。<Number Web> photograph by JMPA

誰も予想できなかった吉田沙保里の銀メダル。しかしメダル獲得以上に、日本にとって彼女が今大会で果たした役割はとてつもなく大きかった。

メダル獲得数0だった長野県の理由はというと……。

 逆に、メダル「0県」の長野は「江戸時代、信濃の国は寺子屋が一番多かった。明治時代も就学率が全国一。土地が狭いから親の跡を継ぐより、勉強して昇進するのが望ましいと言われてきた。だから、子供をスポーツ選手に育てていこうとする親があまりいない」。

 ほ、本当か?

 この記事のあと、バドミントン女子シングルスで奥原希望が銅メダル、男子50km競歩で荒井広宙が銅メダル、シンクロナイズドスイミングのチームで箱山愛香が銅メダルを獲得し、長野は「0県」を返上したのであった。長野出身の私は、寺子屋の数は関係ないと思います。

リオの“手動”温水洗浄便座のお話。

 リオの熱戦を伝える現地の取材陣はどんな生活を送っているのか。スポニチの記者が交代で書いていた「リオ日記」が面白かった。8月17日はスポーツ部の宗野周介記者。

 タイトルは「“手動”温水洗浄便座にフン闘」。現地の温水トイレ事情。あ、こういうの気になる。

《ブラジル版は便器の横に立て掛けてあるホースを持ち、レバーを握って先端から噴射する水を自分で的に当てる。下水の問題で紙を便器に流してはいけないルールがあり、極太ホースから出る強力噴射で洗い落とさなければならない。》

《全自動の日本製品に慣れている私は最初は苦労した。最初に前方から挑戦したところ、的を外して噴射した水が壁に掛かって辺りが水浸しになった。》

《さまざまな不便を感じながらそれでも競技に集中している選手たちって、やっぱり凄い。》

 最後、うまく着地してます。

吉田沙保里に対する励ましに、なんだかモヤモヤ。

 さて、吉田沙保里の話を書こう。

 レスリング女子53キロ級で吉田は決勝で敗れた。五輪4連覇はならず、13連覇中の世界選手権と合わせた連続世界一の記録は「16」でストップした。

《試合後、吉田は「たくさんの方に応援していただいたのに銀メダルに終わって申し訳ない。日本選手(団)の主将として金メダルを取らないといけないところだったのに、ごめんなさい」などと泣きながら話した。》(サンケイスポーツ・8月19日)

 一体誰が吉田を責めるというのか。それどころか吉田を称えたり、感謝する声はSNSでも圧倒的だった。

 でも私はどこかモヤモヤしていたのである。

【次ページ】 やはり、超人の気持は超人にしか分からない。

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