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盆と正月がいっぺんにやってきた?
プチ鹿島8月のスポーツ新聞時評。 

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プチ鹿島

プチ鹿島Petit Kashima

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photograph byJMPA

posted2016/09/01 08:00

盆と正月がいっぺんにやってきた?プチ鹿島8月のスポーツ新聞時評。<Number Web> photograph by JMPA

誰も予想できなかった吉田沙保里の銀メダル。しかしメダル獲得以上に、日本にとって彼女が今大会で果たした役割はとてつもなく大きかった。

やはり、超人の気持は超人にしか分からない。

「吉田泣かないで」「ありがとう」というのは、私を含むあくまで“こちら側”の発想である。きっと吉田は“こちら側”が想像できないレベルの境地で臨んでいたのではないか? だから簡単に励ましちゃっても意味があるのだろうか。そう想像してみるのだけど、五輪4連覇を狙おうという超人の胸中などわかるわけがない。

 そんなモヤモヤを抱きながら各紙を読んでいると、スポーツ新聞ではないが、朝日新聞に「!!」と思うコラムがあった。後半の文章が先に目に入った。

《彼女に重い荷物を背負わせすぎた、という声がある。日本選手団主将など様々な肩書を担った彼女だが、私はそれが、彼女にとってはある種の喜びでもあったと思う。》

 おお、これはかなり「超人の胸中」に迫っているではないか。

《同じ挑戦はできなかった。常に変化を求め、戦う理由を探し、新しい強さの形を追い求めたのだと思う。》

 すごい説得力。でもこんなことを書けるのは誰だ? 想像でここまで書けるのか? 慌ててコラムを書いている人物の名前を確認した。

「野村忠宏」とあった。

 柔道男子60キロ級で3大会連続で金メダルを獲得したあの人だった。

 やはり、超人の気持ちは超人、である。

 野村氏のおかげで吉田沙保里の気持ちがちょっと垣間見れてよかった。

 各紙の機動力を味わったリオ五輪小ネタ。活字でも五輪は楽しめた。そこにメダルの色や数は関係なし。

 以上、8月のスポーツ新聞時評でした。

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