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「木内野球」の印象を塗り替えた夏。
常総学院・佐々木監督の色を見た。

posted2016/08/18 15:30

 
「木内野球」の印象を塗り替えた夏。常総学院・佐々木監督の色を見た。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

木内幸男の取手ニ高時代の教え子である佐々木力監督。戦術を大切にする常総の文化は受け継がれている。

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中村計

中村計Kei Nakamura

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Hideki Sugiyama

 この夏、茨城大会から通じて初めてのことだった。準々決勝の秀岳館(熊本)戦、5回終了後のグラウンド整備の時間に、常総学院(茨城)はベンチの中で佐々木力監督を中心に円陣を組んだ。秀岳館の先発・川端健斗に1安打に抑え込まれていたからだ。

 攻撃に移る際、ベンチ前で円陣を組まないのは、木内幸男前監督の時代からの常総学院の伝統だ。2003年に全国制覇したときの主将で、現在部長を務める松林康徳は、その理由をこう説明する。

「ミーティングで十分、対策は話し合ってますからね。その必要がないんです。それに炎天下、帽子を取って立ってると疲れるじゃないですか。学校関係者には、何もやらなくていいのかって、よく言われるんですけどね(笑)。でも逆にやらなきゃいけないときは、うまくいってないときなんですよ」

佐々木監督「サインの数は30個ぐらいですかね」

 1回戦で近江(滋賀)を、2回戦で中京(岐阜)を、そして3回戦では優勝候補の履正社(大阪)を倒して沸かせた常総学院だったが、この日は秀岳館の川端、中井雄亮の両左腕に翻弄され、得意の機動力を発揮するチャンスがなかった。

 それでも今大会、バントしてもよし、強攻してもよしという自在な野球は、ひと際輝きを放っていた。

 近江に11-0で大勝したかと思えば、履正社戦では4人連続でバントし、大会ナンバー1左腕の寺島成輝から2点を奪ったというシーンもあった。そのうち2人は、3ボールからと、2ストライク2ボールからのスクイズだった。相手の意表を突く作戦にスタンドからどよめきが起きた。

 佐々木監督が話す。

「うちは1球1球、サインが変わりますからね。サインの数は基本的なものは15個ぐらいある。細かいのも合わせれば30個ぐらいですかね。リードの大きさとかを指示するときもあります」

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