リオ五輪PRESSBACK NUMBER
「もったいない」とは異なる言葉を。
手倉森Jの敗退に必要な検証とは。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byJMPA
posted2016/08/11 15:40
自力での決勝トーナメント進出が消えた日本だったが、それでも最後は勝利を手にして見せた。その逞しさは、次につながるはずだ。
日本が直面した課題は、新しくも特別でもなかった。
「こういう大会では初戦が一番大事だと思いますし、最初にああやって守備が崩れたので、すごいチームに迷惑をかけてしまったと思います」
センターバックの一角として3試合にフル出場した植田直通は、大量5失点を許したナイジェリア戦をグループリーグ敗退の原因にあげた。「第1戦の失点の多さに悔いが残ります」と、何度も繰り返した。
攻撃を牽引した浅野拓磨は、コロンビア戦の自分を責めた。
「ナイジェリア戦で勝点1でも取っていれば、何かが変わっていたのかもしれないですけど、僕からしたら2戦目が……。僕が決めきることができずに終わって、引き分けてしまった。僕がチームに迷惑をかけてしまいました」
ナイジェリア戦は初戦の緊張感に呑まれ、コロンビア戦では決定力不足が響いた。国際大会のたびに指摘される日本の課題を、今回のチームも克服できなかった。
先制点の重みも突きつけられた。これもまた、カテゴリーを問わずに課題にあがってくるものである。
「自分たちが主導権を握っているなかでも、相手はワンチャンスで決めてきたりする。トゥーロンでも経験しましたけど、そういうのはやっぱり何回も経験しているので、そこが世界大会でうまくやっていけないところ、世界との差なのかなと感じました」
こう語るのは矢島である。パラグアイ、ポルトガル、イングランドに先制を許し、いずれの試合も勝利をつかめなかった5月のトゥーロン国際を、彼は記憶から引き出していた。
日本の前進を妨げた課題は、新しいものでも、特別なものでもなかった。分かりきったものばかりである。
遠藤航「ちょっとした差がそのまま世界との差」
だからといって、「もったいない」で片づけてはいけない。
「ナイジェリア戦で諦めずに4点取ったり、コロンビア戦も2点ビハインドから追いついたり、与えられたなかでやれることはやれたのかなと思いますけど、ただ、決勝トーナメントには進めなかった。これがいまの自分たちの実力なのだとすごく感じるし、もったいないという言い方もできるのかもしれないですけど、そこのちょっとした差がそのまま世界との差なのかなと純粋に感じるし、これが自分たちの実力だと受け止めないといけないと思います」
遠藤の肌触りは示唆に富む。
「間違いなく自分たちが成長できた3試合だと思いますけど、世界を経験していないぶん、経験不足は出てしまったと思います」と、キャプテンは続けた。