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「絶対に這い上がってやりますよ」
生き残りへ崖っぷちの青木宣親。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byAFLO
posted2016/08/10 07:00
マリナーズは勝ち頭・岩隈久志の活躍もあり、プレーオフ争いに踏み止まっている。
日本でなら出来ることが、メジャーではできない。
原田は青木と2人で2012年のメジャー挑戦以来の4年余りの間、日本でなら野手の間を抜けた打球が、メジャーリーグでは抜けないという事実と向き合ってきた。
原田は元々、東京の下町で開業していた整体治療師だが、その噂を聞きつけたプロ野球選手やプロゴルファー、大相撲の力士やオートバイのレーサーなど、ありとあらゆる競技の人々がその施術を求めるようになった。
大学生の青木にアドバイスして以来の二人三脚。
そんな原田が青木と出会ったのは、青木がまだ大学生だった頃だ。当時、右肩の怪我に悩んでいた青木の治療をする中で、筋肉の付き方などから青木独特の体の動きを見抜き、効率の良い体の動かし方や鍛えるべき部位をアドバイスした。そういうことを繰り返していくうち、「もっといい野球選手になりたい」と一心に思う青木の熱意に触れ、原田はいつしか、青木と二人三脚で“理想の打撃”について考えるようになった。
今よりも、もっと確実に球を捉えるにはどうすればいいのか。もっと強い打球を飛ばすためにはどうすればいいのか。そのためには、どんな体の使い方をすればいいのか。どんな風に体を使うのが理想なのか。
原田はそれこそ頭の先から爪先まで、体中のありとあらゆる部分の有効な動きや機能させるためのベストなポジションを考え抜いてきた。その結果がイチロー以来となる日本におけるシーズン200安打の達成であり、3度の首位打者獲得だった。
メジャー挑戦以来、青木と原田は1つずつ、課題をクリアしてきた。最初は「メジャーに生き残るにはどうすればいいのか?」。次に「控え選手からレギュラーポジションを獲得するにはどうすればいいのか?」。ロイヤルズでのワールドシリーズ出場や、ジャイアンツで頭部や右足に死球を受けるまでの打率3割維持は、その過程で残された結果だ。