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「絶対に這い上がってやりますよ」
生き残りへ崖っぷちの青木宣親。
posted2016/08/10 07:00
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
AFLO
カリフォルニア州フレズノ。ロサンゼルスからもサンフランシスコからも車で片道3時間はかかる田舎町。6月下旬、その少し寂れた感じがする町の中心にある野球場で、タッ、タッ、タッと規則正しく、土を蹴る音がした。外野フェンスの脇を汗まみれの青木宣親が走っている。気温は38度。日本ほどの湿気はないとはいえ、立っているだけで汗が吹き出てくる暑さだった。
「今は自分を追い込んでもいい。これを機会に、体を一から鍛え直したい」
そう言って青木は、ライトからレフトへ、レフトからライトへと走り続けた。黙々と走る青木が何度目かの往復で背を向けた時、気が付いた。何の偶然か、彼のTシャツの背中にはこんな文字が書かれていた。
“PROVE YOURSELF RIGHT”
「自分が正しいと証明しろ」
マリナーズのロビンソン・カノがチームメイトを鼓舞するために作ったTシャツだが、それは青木の“これから”を象徴するような言葉だった。
降格しても「やってることは間違っていない」。
青木がマイナーリーグに降格したのは、6月24日のことだった。マリナーズのスコット・サービス監督は「投手不足を補うために野手を1人減らして、投手を1人加えるのが理由」と慎重に説明しながらも、「今のノリはいつもの成績ではない」と言うのを忘れなかった。
「実際、成績が残ってないんだから仕方がない。でも、やってることは間違っていないと思う。実際、マイナーに落ちる直前は打撃の調子が上がっていたし」
青木はそう語る。確かにマイナー降格直前の6月14日から始まったマリナーズの遠征10試合で、青木は25打数8安打だった。しかし、開幕から座っていた1番打者の椅子は、すでに同僚のケーテル・マーテイ遊撃手やレオニス・マーティン中堅手に奪われていたし、左投手が先発した2試合には欠場していた。別の言い方をすれば、すでにチームからの信頼は失われて久しかったということだ。