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G1クライマックスも「トランキーロ」。
“あっせんなよ”内藤哲也の代理業。

posted2016/08/02 11:30

 
G1クライマックスも「トランキーロ」。“あっせんなよ”内藤哲也の代理業。<Number Web> photograph by Essei Hara

前IWGPヘビー級王者の内藤。とにかく、勝っても負けても会場を沸かせる能力はピカイチだ。

text by

原悦生

原悦生Essei Hara

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Essei Hara

 内藤哲也。この男、なんだかわからない。

 長めのスペイン語の名前の軍団を率いている。

「Los Ingobernables de Japon」(ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン)。「日本の制御不能軍団」と訳されているが、要は反体制派で、そんなやつらでも新日本プロレスを統治できる可能性がある、という意思表示だ。

 なぜだかよくはわからないけれど今、ファンから圧倒的な支持、人気を得ていることは事実だ。かつて、古舘伊知郎さんは私に言った。「なあ、ハラ。プロレスラーは代理業だろ。自分ではできないけれど、強くなりたい、強くなって憎い奴らをやっつけたいという願いを、自分に代わってリングでかなえてくれるレスラーに託すんだ」と。

 その代理業という部分では変わらないが、内藤の場合は戦い以外のパフォーマンス部分に比重が大きい。日常生活での不満、ストレスを、体制に対して好き勝手に言葉とパフォーマンスで逆らうことで、ファンの蓄積したうっぷんを代わりに吹き飛ばしてくれるのが、今の内藤なのかもしれない。

 でも、みんなそんなにため込んでいるのかなあ?

 元サッカー選手で「旅人」の岩本輝雄さんなんか、メキシコつながり(メキシコリーグに挑戦したことがあるのだ)で今では内藤にぞっこん。黒いシャツを着て後楽園ホールに頻繁に通っている。「お仕事」と言いながら、あのニコニコ顔でテレビ実況席に座っている。何かをため込んでいるようには見えないが……。

とにかく見事! 内藤のスペイン語翻訳。

 以前からの軽快な入場曲「STARDUST」が、内藤の今のゆっくりした入場の雰囲気とはマッチしないが、内藤はそのミスマッチを楽しむように入場に時間をかける。

 内藤は「トランキーロ」なるスペイン語を「あっせんなよ」という日本語にして、今ではキャッチフレーズのごとく多用するようになった。

 まあ、たぶん、メキシコで訳が分からなくてムキになっていたとき、誰かから「トランキーロ」と連発されて本人がキョトンとした覚えがあるに違いない。

 スペイン語を含めて、ラテン系の「トランキーロ」の発音に近い言葉の元の意味は「静かに」だ。トランキーロの使い方としては、興奮してガタガタ言っているやつに「まあ、落ち着いて」とか「ちょっと、静かにしろよ」といった感じで使う。

 だから内藤の「あっせんなよ」はかなりの名訳だろう。

 ましてや「Los Ingobernables de Japon」なる長くて覚えにくいスペイン語を観客に合唱させることに成功して、内藤はすっかりいい気分になってほくそえんでいる。

【次ページ】 「あっせんなよ」は内藤自身への呼びかけなのか?

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