フットボール“新語録”BACK NUMBER
「バカ正直」ではW杯で勝ち上がれない。
大勝と惜敗で揺れる日本代表の実力。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byTakuya Sugiyama
posted2016/07/02 11:00
後半からボスニアが宇佐美を厳しくマークすると、左サイドでタメが作れなくなり、攻撃が機能しなくなった。
サッカーはひとつの修正で正解が“不正解”になる。
サッカーでは往々にして、相手のひとつの修正で、正解だったことが正解でなくなる。めまぐるしく変わる正解を見つけ続けなければならない。にもかかわらず、日本は前半と同じことをやり続けてしまった。まさにバカ正直。駆け引き下手と言い換えてもいい。
では、日本はどうすべきだったのか。
ここで注目すべきは、ボスニアの両サイドバックが、代表デビュー戦だったということだ。ボスニアのバジュダレビッチ監督が会見で「若手にチャンスを与えたかった」と明かしたように、サイドバック2人は経験が浅く、一杯いっぱいの状態でプレーしていた。
浅野が内側に絞ってボールをもらい、酒井高徳のオーバーラップを引き出すといった動きをしていたら、対面した左サイドバックのベキッチは選択肢を絞れず、パニックに陥っていただろう。
ピッチにおける正解が変わることを認識し、相手の心理を読み続け、嫌がることをきっちり実行する。その力に磨きをかけることができれば、技術・俊敏性・連動性という武器を、どんな状況でも発揮できるチームになるのではないだろうか。それを実現するためには、学校における「正解が1つ」という教育のあり方から変えなければならないかもしれないが。
「バカ正直者」では勝てない。「賢い正直者」になる必要がある。
(本連載は今回が最終回となります。今までご愛読ありがとうございました)