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「バカ正直」ではW杯で勝ち上がれない。
大勝と惜敗で揺れる日本代表の実力。 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2016/07/02 11:00

「バカ正直」ではW杯で勝ち上がれない。大勝と惜敗で揺れる日本代表の実力。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

後半からボスニアが宇佐美を厳しくマークすると、左サイドでタメが作れなくなり、攻撃が機能しなくなった。

「ナイーブ」という言葉をあえて通訳すると……。

 ところが7日のボスニア・ヘルツェゴビナ戦では、逆に日本サッカーの軟弱さが際立ってしまう。清武のゴールで先制しながらもすぐに同点にされ、さらに後半にFKの流れから失点して1対2で敗れた。190cmを越える格闘家のような相手に競り負け、肉体的にも精神的にも劣勢のまま終了のホイッスルが鳴った。

「バカ正直すぎた」

「ボスニアの方がリアリストで、我々は正直者だった」

 ハリルホジッチ監督が会見で発した「ナイーブ」という単語を、通訳の樋渡群氏は「あえて日本語にすれば」と断ったうえでそう訳した。

 ボスニア戦では香川が負傷で出場できず、右サイドに21歳の浅野拓磨が出ていたとはいえ、なぜこれほど強者と弱者の間を揺れ動いてしまったのだろう。

日本には「相手の顔色を見る力」が足りない。

 試合後、選手に話を聞くと、「バカ正直」の正体が浮かび上がってきた。結論から言えば、日本には「相手の顔色を見る力」が足りない。

 ボスニア戦の前半の立ち上がりは、日本は決して悪くなかった。左サイドで宇佐美貴史がドリブルで目の前のサイドバックを翻弄し、ボスニアの守備ブロックをバラバラにした。15分には清武のシュートがバーに当たっている。浅野も快足を生かして右サイド裏のスペースを突いた。

 左でタメを作って、右で仕留める――。ザック時代の十八番、左・香川、右・岡崎慎司のコンビを思い出すような形だった。

 ところが後半、その形はほとんど機能しなくなる。ボスニアが宇佐美を警戒し、しっかりとマークをつけてきたのだ。左にタメを作れなければ、右の浅野の飛び出しが読まれやすくなる。いくらワールドクラスのスピードでも、テレホンパンチではガードされてしまうだろう。

【次ページ】 サッカーはひとつの修正で正解が“不正解”になる。

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