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EUROのサッカーは標準化しているか。
抗うのはドイツ、スペインら数カ国。

posted2016/07/01 07:30

 
EUROのサッカーは標準化しているか。抗うのはドイツ、スペインら数カ国。<Number Web> photograph by AFLO

アイスランドがその規律と戦術でイングランドを倒した一戦は、今大会最大のジャイアントキリングとなった。

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北條聡

北條聡Satoshi Hojo

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 標準化、多様化、固有化――。

 ヨーロッパの代表チームはこの先、どの道へ突き進むのか。ベスト8が出揃った今大会のEURO(ヨーロッパ選手権)は、やけにそんなことを考えさせる。イギリスのEU(ヨーロッパ連合)離脱に揺れるヨーロッパにとって、今年(2016年)は歴史的な転換点となるかもしれない。

 現地では早くも他のEU加盟国がイギリスに追随する「離脱ドミノ」を懸念する声が上がっている。そうした事態が現実となれば、今回の一件は、まさにEUの「終わりの始まり」ということになる。

 今大会のEUROも、いわゆる「世界標準」に忠実なフットボールを展開する国が多数派だった。大雑把に言えば『よく走り、よく闘い、よく働く』フットボールだ。これに『より速く、より高く、より激しく』という新・三要件を加えれば、各国の差異はさらに小さくなりそうだ。

 ベスト8の顔ぶれを見ると、ポーランド、ウェールズ、アイスランドが「標準化」の代表格だろうか。各国の違いが際立つのはピッチ上よりもむしろ、スタンド(サポーターの応援風景)の方だったかもしれない。

似たスタイルが広まる中で、逆側へ進む国も。

 グローバル化はフットボールの世界でも加速する一方だ。ヒト、カネ、モノが大量かつ高速移動する現代では、競争市場における「成功例」が短期間で共有されやすい。流れに乗れなければ、瞬く間に「負け組」へ一直線。

 となれば合言葉はトレンドに乗り遅れるな――となる。

 しかも1990年代以降、世界中からヒトやカネが集まり続けるヨーロッパの巨大市場(主にクラブシーン)がトレンドの発信地なのだ。どの大陸や地域よりも、標準化が進みやすい環境が整っていると言っていい。

 もっとも、今回のEUROで興味深いのは、そうした標準化路線を走る国々ではない。冒頭で触れた「多様化」、「固有化」の道を歩む少数派の国々だ。

 前者はドイツとベルギー、後者はスペインとイタリアだろうか。もう少し前者の枠を広げれば、フランスとイングランドを加えてもいい。ともかく、多様化と固有化――その違いを鮮明に映し出すのが「移民」の存在だ。厳密に言えばホームグロウンの(移民)二世、三世である。その数は「多様化」する国に多く、「固有化」する国には極端に少ない。

【次ページ】 ドイツ代表の民族的多様性は、国の姿の反映。

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