ひとりFBI ~Football Bureau of Investigation~BACK NUMBER
EUROのサッカーは標準化しているか。
抗うのはドイツ、スペインら数カ国。
text by
北條聡Satoshi Hojo
photograph byAFLO
posted2016/07/01 07:30
アイスランドがその規律と戦術でイングランドを倒した一戦は、今大会最大のジャイアントキリングとなった。
ドイツ代表の民族的多様性は、国の姿の反映。
「この代表チームは、我が国のロールモデル」
2014年、ブラジル・ワールドカップを制したドイツ代表を誇らしげに語ったのは、首相のアンゲラ・メルケルだ。多民族国家へと突き進むドイツの理想像という意味合いだろうか。主力の半数近くは当時もいまも『M世代』が占めている。
ここで言う「M」とは、一般的に使われる「ミレニアル世代」の頭文字ではなく、多文化主義を意味する「マルチカルチュラリズム」のイニシャルだ。もはや「ドイツ代表=ゲルマン魂」という、お手軽な連想ゲームが成立しにくい時代と言っていい。
今大会のスタメン組だけでも、トルコ系のエジル、スペイン系のマリオ・ゴメス、チュニジア系のケディラ、ガーナ系のボアテンク、ノルウェー系のヘベデスらを「M世代」としてカウントできる。
そして、ベルギーもまた多民族チームだ。旧ザイール(コンゴ民主共和国)系のルカク、モロッコ系のフェライニ、マルティニーク(フランスの海外県)にルーツのあるビツェル、インドネシア系のナインゴラン、スペインとポルトガルの両国にルーツのあるカラスコらを擁している。
彼らこそ、代表チームに新しい要素(多様化)をもたらす「脱ドイツ」「脱ベルギー」のアイコンだろう。
ベルギーやイングランドはまだ「烏合の衆」?
もっとも、ドイツに比べると、ベルギーは多様(異質)な個人を統合するプランに弱みがありそうだ。悪く言えば、烏合の衆に見えなくもない。その点では「脱4-4-2」のイングランドも同じだろうか。いずれも移民政策が空転した(感のある)自国の実情と妙にリンクしている。つまるところ指導者(=監督/政治家)の手腕に問題アリというわけだが……。
ディディエ・デシャンという有能な指導者を擁するフランスにしても、ロールモデルと呼べる仕上がりには程遠い印象だ。