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ハリルホジッチのEURO決勝T談義。
「今大会にビッグチームはいない」
posted2016/06/30 17:00
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
AFLO
EURO2016のラウンド16にはとても強い印象を受けた。大きな驚きがたくさんあったからだ。優勝候補と見られた3つの国の敗退、クロアチアとディフェンディングチャンピオンのスペイン、とりわけサッカーの母国であるイングランドがアイスランドに敗れたのはセンセーションだった。
イングランド対アイスランド戦は、内容を見れば結果は順当だ。シンプルなスタイルのアイスランドには、ファンタジーも美しさもない。ロングボールを多用し、空中戦で力を発揮する。早めのクロスをあげてセカンドボールの戦いに勝ち、さらにパスを展開する。その攻撃に迷いはない。
また守備も、低めにブロックを設定して、コレクティブかつひたむきに守る。その情熱とエネルギーは途切れることなく、90分間最後まで足が止まらなかった。
天才もいなければビッグスターもいない。テクニックで違いを見せつける個の力もない。そんなチームが予選ではオランダを2度破り、グループリーグでトルコを撃破した後に、今またイングランドから劇的な勝利をあげた。
彼らは相手をリスペクトしながら、自分自身も十分にリスペクトしていた。そしてサッカーはコレクティブなスポーツであることを改めて示してくれた。彼らの活躍には、私もとても満足している。
試合前から勝利を確信していたクロアチアの油断。
ポルトガルに敗れたクロアチアには、心の緩みが見られたのが残念だった。優勝候補の筆頭に躍り出て、試合前から自分たちの勝利を確信しているように私には見えたし、何人かの選手には疲労の蓄積やコンディション不良がうかがえた。ラキティッチは少し疲れていたし、ペリシッチは集中を欠いていた。マンジュキッチは動きが重く、モドリッチはプレーの位置が低すぎて長く有効な攻撃を組み立てられなかった。
クロアチアは選手の多くが準備に失敗したうえに、監督が試合中に適切な対処ができなかった。後半は少し良くなったとはいえ、その場で即座に対処しないと、1分の遅れが致命的なミスを生み出すこともある。