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EUに続きEURO“離脱”で悪夢の1週間。
イングランドは生まれ変われるのか?
posted2016/07/01 11:10
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
AFLO
できることなら時計の針を戻してやり直したい。イングランドには、そのような心境の国民が多いのではないだろうか?
6月27日、母国代表はイングランド史上最悪と呼ばれる敗戦を喫した。
EURO2016で、初出場アイスランド相手の16強敗退(1-2)。ボール支配率では7割対3割と勝っていても、枠内シュート数では4本対5本と劣っていたように、カウンターを狙う敵の術中にはまった。「サッカーの母国」が「EURO史上最小国」に負けるべくして負けてしまった。
その4日前には、国民投票で英国のEU離脱という衝撃の結果を見ていた。もちろん、サッカー界の域を越えた一大事で、結果を勝利と受け取っているのは、右寄りの政党ぐらいだろう。
支持者でもないのに離脱に票を投じた地方の人々は、移民の増加や豊かとは言えない日常への不満から、世界経済への影響といった後先を考えずに投票してしまったのだろうか? 国の経済を支えるロンドン市内では、投票での「敗戦」に対する人々の落胆ぶりと、「恥ずかしいとしか言いようがない」という声が、代表の試合結果に対するそれを上回っているように感じられる。
アイスランド戦敗戦よりもEU離脱で大混乱。
アイスランド戦の翌朝にしてもそうだ。大衆紙の典型である『サン』紙こそ、敗戦を悲しむウェイン・ルーニーの長男の写真を1面に使ってEURO敗退を大々的に伝えた。しかし他のメディアではEU離脱に伴う混乱が国民最大の関心事として扱われていた。
デイビッド・キャメロン英国首相の辞任は、新たな保守党党首の決定待ちの状況を呼んだ。そして労働党は責任のなすり合いで崩壊寸前。EU残留支持が優勢だったロンドンでは「独立都市」としてのEU加入説まで浮上している。
そのロンドンの前市長は政治的野心に駆られてか離脱を支持し、思惑通りに次期英国首相の有力候補に担ぎ出された。国内の混沌とした騒ぎは、ロイ・ホジソンが監督の職を辞し、数少ない英国人候補の中から現U-21代表監督のガレス・サウスゲートの就任が有力視される、イングランド代表の先行き不安の比ではない。