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宇佐美貴史の移籍後の命運を占う。
アウクスの監督は“超”守備的戦術。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2016/07/03 08:00
宇佐美貴史はG大阪に復帰してJ1昇格、三冠制覇を達成したが、2015年の後半からは調子を落としている。ドイツでブレイクできるか。
宇佐美の技術が活きるサッカーになる展望は?
宇佐美のテクニックとドリブルを活かせるようなサッカーとは正反対の、弱者の戦い。それが、シュスター監督がはじめてブンデスリーガ1部に臨んだシーズンで採用し、成果をおさめた戦術だ。
もちろん、アウクスブルクの選手層はダルムシュタットに比べれば厚い。選手の質も上だ。そしてアウクスブルクの選手たちには、バインツィアル監督のもとで築き上げたサイドからの攻撃がある。
「これからはボールを多く使った練習を取り入れていく」とシュスター監督は語り、ダルムシュタット時代とは違うサッカーへの色気も見せる。
ただシュスターが、自身にとって唯一の成功体験である弱者のサッカーをアウクスブルクで採用しても、何ら不思議ではない。むしろロジカルな選択だとさえいえる。
シュスター監督の得意とするサッカーの特徴を考えると、宇佐美の特長が活かされるかについては疑問が残る。彼とて、ドイツに守備力を磨きにきたわけではないだろう。
この移籍はミスマッチではないか。そう言われても不思議ではない。事実、今回の移籍は成功が確約された類のものではない。
結局、ゴールに絡めば使われるという真実。
ただ、だからこそ面白味もあるのではないだろうか。
アウクスブルクでは、単独で相手の守備を切り裂いて、ゴールまで持って行く力が求められる。あるいは前線にいて、少ないチャンスをゴールにつなげる。
チームは宇佐美を左MFとして考えているそうだが、攻撃的なポジションの選手である以上、ゴールやアシストの結果を残さなければ生き残ることはできない。目に見える結果を残したときに、はじめてそれ以外の働きが評価される。
もしもシュスター監督が守備を第一に考えれば、宇佐美を起用しながら守備力を鍛えさせるよりも、守備力に長けた他の選手を起用するほうが早い。
ただ、宇佐美がゴールに絡む働きや、独力で相手の守備を崩すようなプレーを数多く見せられれば、シュスター監督も宇佐美を使わざるをえない。そして、試合に使われれば宇佐美の守備面もまた鍛えられていくはずだ。それは宇佐美の成長につながる。