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宇佐美貴史の移籍後の命運を占う。
アウクスの監督は“超”守備的戦術。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2016/07/03 08:00
宇佐美貴史はG大阪に復帰してJ1昇格、三冠制覇を達成したが、2015年の後半からは調子を落としている。ドイツでブレイクできるか。
自陣に引きこもり、ファウルも厭わずに勝つ。
昨季、彼がダルムシュタットで作り上げたチームの特長は実にわかりやすかった。彼らの特徴的なデータを以下に紹介する。
・平均ボール支配率 36.8% リーグ最下位(40%を下回ったのはダルムシュタットだけ)
・平均走行距離 111.6キロ リーグ最下位
チームの走行距離が短いのは自陣に引きこもり、前に出て行くシーンと選手が限られているから。そういう戦いをするから、支配率も下がる。
ちなみに、各選手のイエローカードの合計は86枚で、リーグで2番目に多かった。昨シーズン、ダルムシュタットと対戦した際にマインツの武藤嘉紀はこう話していた。
「『とにかく相手は挑発してくる。何回も削られるだろうし、ボールと関係のないところでやられると思うけど、それで苛立つな』と監督から試合前に言われていた。ドイツでやってきて、今までで一番あくどかったというか……」
ラフプレーも含めて、自陣でのハードな守備を武器にして勝ち点を稼いだチームなのだ。
ロングボールとセットプレーで点を取る。
攻撃面でのデータも特徴的だ。
・総ゴール数……38ゴール 18チーム中14位
・セットプレー(PKはのぞく。以下同じ)からのゴール数……17ゴール リーグトップ
・総ゴールのうちセットプレーが占める割合……45% リーグトップ
・シーズンのCK獲得数……119本 リーグ最下位
・ビッグチャンスの数……147回 18チーム中17位(キッカー誌の集計)
攻撃で相手を崩すようなシーンはほとんどなく、4-4-1-1の布陣で最前線に置かれた屈強なセンターフォワードのバグナーめがけたロングボールとカウンター。それらが流れのなかの攻撃の主なパターンだった。そして、数少ないセットプレーからゴールを狙うことに最大の情熱と力を注いでいた。
昨季のブンデスリーガで最も戦力に乏しいチームとしての戦いを徹底したからこそ、周囲の評価を覆し、1部に残留出来たわけだ。