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半年間で31試合に出場した遠藤航。
過酷スケジュールを乗り越えた方法。
text by
轡田哲朗Tetsuro Kutsuwada
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2016/07/01 07:00
出場機会を危ぶむ声もあったが、いまや浦和でも完全な中心選手。遠藤航の器はまだ底が見えていない。
受け身の状態でスプリントする大きな負担。
浦和のサッカーは、ボール保持率を高めて相手を自陣に押し込む展開を理想とする。それはペトロヴィッチ監督が就任してからずっと変わらないが、今季はボールを失った瞬間から、一気にプレスを掛けて2次攻撃、3次攻撃を仕掛けることに取り組んできた。それが最も機能した試合が前述の川崎戦だが、チーム全体に疲労感が見えてきてからは、最初のプレスが突破されて一気に逆襲を食らうことが増えた。
そうした局面では、遠藤の周囲に数的不利な状況が生まれ、全力で相手FWの動きに対応する動きや、サイドのスペースに飛び出した相手の前をふさぐ動きを強いられる。単純な走行距離だけでなく、受け身の状態でスプリントをする回数が増えることは、大きな負担を生んでしまった。
先制点を与えては前掛かりになり、カウンターを受ける回数と運動量が増える。チームの不調は、遠藤にとっても厳しい状況を生み出していた。
「少し重さを感じることはありますけど……」
それでも負傷も途中交代もなく戦い続けられるのには、元来の体の強さもあるだろうが、日々のコンディショニングを丁寧に行っているという要素がある。
「連戦になってしまうと、コンディションを整えることを優先するしかないですよね。普段以上に、寝る前にストレッチをして体をほぐすことや交代浴といった、今までやってきたことを丁寧にするしかない。食事も連戦だからこそ量を多めにしていますよ。だから体重も落ちていないです」
7月2日に開幕するセカンドステージは、第4節の“さいたまダービー”である大宮アルディージャ戦まで浦和の一員として戦い、その後は五輪代表での活動になる可能性が高い。
「こんなに連戦が続くのは初めてのことだけど、ケガもなくやれているということは、自分としてはうまくコンディション調整ができていると思います。少し重さを感じることはありますけど、やるしかない部分もありますからね。
こういう日程になるのは覚悟の上でレッズに来たわけですし、A代表、五輪代表があるのも覚悟してます。ポジティブに考えれば、こんなに試合ができるのもなかなかないチャンスではあるし、連戦が嫌いではないタイプなので。休みがなくても、トレーニングの量で試合への準備はできるので、そこで調整しながらやっている感じです。ここが耐え時かなとも思いますね」
プロサッカー選手としての初めての移籍を経験したシーズンで、これだけの試合数をこなしていることは、心身への疲労を大きく与えただろう。その反面、前述の広州恒大戦やFCソウル戦、日本代表のゲームで連戦を乗り越えつつ戦った経験は大きな財産になる。
リオ五輪ではキャプテンとしてチームの中心に君臨することが期待される遠藤。コンディショニングに細心の注意を払いつつ駆け抜けてきた半年間を、ブラジルの大地の上で生かしていけるはずだ。