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「選ばれし者」となったレブロン。
故郷クリーブランドとの約束を果たす。
text by
長澤壮太郎Sotaro Nagasawa
photograph byJesse D. Garrabrant/NBAE via Getty Images
posted2016/06/22 17:00
2人の息子とチームメイトに囲まれ、満面の笑みのレブロン。試合直後には、号泣し、へたり込み、大勢と抱き合い……と大変な喜びようだった。
カリーの登場でまるで「過去の人」に。
しかしすぐに優勝するのは簡単ではなかった。メンバーの補強やケミストリー、監督との不仲説など、従来通りのパターンで、レブロンが行く先々に批判が待っていた。シーズン途中での監督解任など様々な問題を超えながら彼はもがいた。
そして皆がレブロンをサポートし始めた頃、NBAに彗星のごとくステフィン・カリーが登場し、頭角を現した。クレイ・トンプソンとのコンビ、スプラッシュ・ブラザーズ。2人ともサラブレッドで派手にスリーポイントシュートを量産し、あっという間にNBAチャンピオンに輝いた。容姿端麗でオシャレなプレイをするカリーは瞬く間にNBAの顔となり、ユニフォームもスニーカーの売り上げも一気に1位の座に君臨した(それまでは両方ともレブロンが1位だった)。それだけではない。家族ぐるみで大統領とも交流し、まるでロイヤルファミリーのような扱いをうけた。
レブロンの批判に明け暮れたメディアやファンは、手のひら返しでカリーをスター扱いし、レブロンはいきなり「過去の人」に格下げ。目の前で主役の座を奪われていく様は無情にも見えた。
チームを団結させた秘密の儀式。
しかし彼は逆境をモチベーションに変えた。そして彼を支えたのは常日頃から大切にしてきた仲間だった。
特にマイアミ時代から彼とチームを共にするジェームズ・ジョーンズは、レブロンの手となり足となりチームをまとめる役を買って出た。
優勝はもちろん、プレーオフさえ経験のないチームメイトもいる上に新人のヘッドコーチ。チームの中で経験と精神力が一番あるのはレブロンとジョーンズの二人だった。そのジョーンズがチーム全員にある提案をした。
それは、優勝するともらえるラリー・オブライエン・トロフィーの形をしたジグソーパズルを作り、優勝までに必要な勝利数の16個のピースに分けるというもの。1勝するごとに1人の選手がそのパズルにピースを入れていく。単純で子供の遊びのような提案だが、プレーオフやファイナルなど重圧のかかる場面で、経験の少ないチームはロッカールームでバラバラになりやすいから、それを防ぐにはいいアイディアだった。名将といわれるパット・ライリーもよくチームをまとめるために全員の大切なものを一つの箱に入れて勝利を願うなどの手法を取った。
ジョーンズもこのパズルを例えに、「バラバラだと僕らはただのピースに過ぎない、しかしまとまって団結すればトロフィーが手に入る」と仲間を諭した。
ベンチメンバーは15人。1勝するごとにメンバーはパズルをはめていった。勝利した後、メディアなどがロッカールームから出たことを確認して、チームメンバーだけで行う秘密の儀式でもあった。