#sotaronbaBACK NUMBER
「選ばれし者」となったレブロン。
故郷クリーブランドとの約束を果たす。
text by
長澤壮太郎Sotaro Nagasawa
photograph byJesse D. Garrabrant/NBAE via Getty Images
posted2016/06/22 17:00
2人の息子とチームメイトに囲まれ、満面の笑みのレブロン。試合直後には、号泣し、へたり込み、大勢と抱き合い……と大変な喜びようだった。
唐突なマイアミ移籍、その後もやまない批判。
その後、地元キャバリアーズからマイアミに移籍する際、所属球団に一切通知のないまま全米の生放送で突然マイアミに移籍することを発表し、クリーブランドからは“地元を捨てた裏切り者”のレッテルを貼られた。当時、キャバリアーズのファンがレブロンのユニフォームを燃やし、レブロンが凱旋した試合では激しく罵倒するなどということもあった。キャバリアーズのオーナーも異例の手紙を公式のウェブサイトに掲載し、彼を「裏切り者」と明記した。
マイアミに行ってからは、主にプレイ面での批判が集中し、重要な局面に弱い、メンタルが弱い、泣き言が多いなどと常に批判された。
実際、今年で彼は6年連続でファイナルに出場しているが、昨シーズンまでのファイナルの成績は2勝3敗と負け越し。今回ウォリアーズに負けていたら、2勝4敗と最高峰の舞台での勝負弱さを決定づける結果となっていたはずだ。ちなみに世界中が憧れる神様マイケル・ジョーダンはファイナルに6回出場し、6回優勝して6回ともMVPに選ばれている。
プロの世界で何かを成し遂げる前に「選ばれし者」として自らを神様と同じくくりで表現したことは、確かに敵を作ってしまう要因となった。しかし彼も人間であり、誰よりも苦労し、さらに努力を積み重ね、批判に負けず結果を残してきたのだ。
優勝から遠ざかった街・クリーブランドへの帰還。
2年前、キャバリアーズのオーナーと密会し、過去のわだかまりを解消した彼は古巣へ戻った。一度裏切ってしまった故郷のファンに優勝をもたらすために。
スターの帰郷にクリーブランドのファンは動揺しながらも裏切られた悲しみを超えまた彼に希望を託した。52年前、NFLのクリーブランド・ブラウンズが王座に輝いて以来、どのスポーツでも優勝を味わっていない街。ファンは成功からあまりにも遠ざかりすぎていて、信じても裏切られるのがオチ、この街には勝てない呪縛があるとまで囁かれていた。
レブロンの決断は、バスケットボールだけではなく野球、アメフトそしてクリーブランドの経済までも背負うものだった。