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レブロンこそ「スーパーヒューマン」。
NBAファイナルで、常識は覆った。
posted2016/06/21 11:20
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
AFLO
超人の前では、「常識」は通用しなかった。
最終戦までもつれ込んだNBAファイナル、最後の最後に超人的な活躍を見せ、クリーブランド・キャバリアーズに初優勝をもたらしたのは、レブロン・ジェームズだった。
アービングの勝負強さも素晴らしかったが(勝負を決める3ポイントシュート!)、ジェームズはまさに超人的だった。
それに対抗するはずの、ウォリアーズの「民主化オフェンス」(素早いパスさばきで、フリーの選手を作る)には徐々に疲れが見え、特にエースのステフィン・カリーがアーティスティックなシュートを決められなかった。
第7戦、レブロンの3つのプレーには、完全に脱帽せざるを得なかった。
89-89の同点で迎えた残り1分50秒、ウォリアーズがターンオーバーを奪い、速攻に転じてアンドレ・イグダーラの2点レイアップは確実……と思った瞬間、疾風のごとく帰陣したレブロンは、ブロックでこのピンチを防いだ。
第7戦。試合の終盤。疲れなど微塵も感じさせなかった。もしも、ここでウォリアーズが2点を取っていれば、グッと優勝へ近づいていたはずだ。
アメリカのテレビ局で解説を務めていたジェフ・ヴァン・ガンディは、
「スーパーヒューマン・ディフェンシブ・リカバリー」
とコメントした。
これ以上の賛辞はないだろうし、付け加えることもない。
エジーリに格の違いを見せたレブロン。
そしてもうふたつは、レブロンが相手の採った戦術にダメージを与えたシーンだ。
第4Qの残り5分24秒、キャバリアーズは4点を追っていた。ウォリアーズのスティーブ・カー・ヘッドコーチは、インサイドのディフェンスを強化するためか、長身のフェスタス・エジーリをコートに送り込んだ。
しかし、レブロンはエジーリを外におびき出し、中で仕事をさせようとはしない。3ポイントシュートのフェイクでファウルをもらったのだ。