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五輪のOAは吉田麻也の成功にならえ!
下の世代に「降りていく」重要性。
posted2016/06/18 08:00
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
JMPA
リオデジャネイロ五輪、本大会を戦う18名のメンバー登録の先陣を切ってOA枠の藤春廣輝と塩谷司が内定した。
OA枠に攻撃的な選手を優先するのではなく、守備の選手を2人選出したのには、最終ラインにケガ人続出というチーム事情がもちろんある。ただ、リオ五輪を勝ち抜くという観点からすると、これには大きな意味がある。
五輪を含む短期決戦、特にグループリーグにおいてもっとも重要なのは、負けないことだ。つまり点を取られないことである。勝ち点1を積み上げていけば、グループリーグ最終戦まで突破の可能性を持って戦うことができる。そのためには、まず守備の安定を計ることが大前提になる。
実際、前回のロンドン五輪では吉田麻也と徳永悠平という守備の選手をOA枠で加入させ、全体の守備力をアップさせてベスト4進出を果たした。ここ5大会でもっとも成功した経験は今回の選考にも生かされており、弱点を補う2人の選出は極めて合理的といえよう。
ただ、OAの選手が持っている能力をすんなりとチームで発揮できるかというと、実はそれほど簡単ではない。
下の世代の目線までOAが降りていく必要がある。
シドニー五輪ではOA枠でGK楢崎正剛、森岡隆三、三浦淳宏が選出された。楢崎はチームの若手にイジられ、馴染んで獅子奮迅の活躍を見せたが、もう2人はその力を発揮しきれなかった。
アテネ五輪の時は小野伸二が選出されたが、持っている能力からすると十分力を発揮したとは言えず、結果も出せなかった。曽ヶ端準も経験のあるGKとして活躍を期待されたが、ほとんどチームに貢献できなかった。
過去のチームから見えてくるOA選手の成功のポイントは、チームとのマッチングだ。OAの選手が、下の世代の目線に合わせてコミュニケーションを取れるかどうかは、本人の資質やチームの雰囲気に左右される。しかも直前の合宿を含めて短期間しか一緒にいられないので、その距離を埋めるのにどの選手も苦労する。
OAではないが、例えばシドニー五輪で初めて中田英寿がチームに合流した時は、他の選手との間に距離があることを自らキャプテンの宮本恒靖に伝えた。宮本は食事の際、中田のテーブルに毎回違う選手を呼ぶなどして中田をチームに融合させていくことができたが、場合によっては宮本のようなOA選手との橋渡し役が必要になってくる。