サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
岡崎慎司が掴んだ「俺は動く選手」。
代表で“好きなように”やる理由。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byTakuya Sugiyama
posted2016/06/07 07:00
完全にDFを置き去りにしてフリーになった上で、難しい角度のヘディングを決めた。岡崎慎司は、日本サッカー史のFWの中でも異次元の存在になりつつある。
「バーディーの相棒」から更に一段上へ。
そして、彼をかきたてる屈辱感、悔しさを象徴したのが、最終節のチェルシー戦だった。17試合連続で先発出場を続けていた岡崎は、この試合ではベンチスタートとなった。この試合で先発途中交代ならば、26試合途中交代というリーグ記録に並んだが、その可能性も潰えた。
ベンチに座り、試合を見守る。
その状況下で、岡崎はレスターでの自身の居場所を模索していた時期を思い出しただろう。勝ち点を重ね続けるチームのなかで生まれた序列を覆すために、「自分に何ができるのか?」と考え、密集地でのボールキープや攻守に動き続けることで、チームに足りなかった力をもたらし、バ―ディーの相棒のセカンドストライカーというポジションを手に入れ、優勝へ向けて走り続けるイレブンのひとりになった。しかし、その場所は確約されたものではないと、改めて思い知らされたに違いない。
そのチェルシー戦。レスターは序盤苦戦したものの、岡崎が投入されると下がり気味だった守備ラインが高く保たれ、1-1のドローで試合を終えることに成功した。指揮官は岡崎の存在意義を再確認したかもしれない。しかし、岡崎が得点を決めることはなかった。シュートを決めきれなかった場面もあったが、岡崎を“活かす”という意識をチームに植え付けることができずにプレミア最初のシーズンが終わった。
周囲の強すぎる自己主張を岡崎はどう思っているか。
「弱肉強食」
岡崎は自身が生きる世界をそう表現する。
「誰もが自分の得意なプレーに自信を持ち、それをやり通した。監督が選手に求めるのはシンプルなことで、それ以外は自由を与えている。だから、結果を出したもん勝ちみたいなところがある」と語った岡崎の心中には、自己を強く主張するそのプレーを繰り返すチームメイトに対して、腹立たしさがあったかもしれないと想像する。結果を残す選手を認めざるをえない状況下で、もがき続けた1年間だったのだろう。