サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
再び現れた「自分たちのサッカー」。
ボスニア戦で露呈した日本の悪癖。
posted2016/06/08 11:30
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
Takuya Sugiyama
あれは、どこへ行ってしまったのだろう?
28分に清武弘嗣があげた先制点は、ファインゴールと言っていいものだった。そして、いかにも日本らしいものだった。個人の技術とアジリティがコンビネーションを輝かせ、フィジカル自慢の大型選手を翻弄した。
ただ、6月7日の日本がボスニア・ヘルツェゴビナを追い詰めたかと言えば、答えは「NO」になる。1-2のスコアは論理的だ。
相手のスカウティングが十分でないテストマッチでは、試合中に情報を蓄積していく作業が進められる。時間の経過とともにマッチアップする選手の特徴を把握し、相手側の攻撃パターンにも馴染んでいく。
それだけに、前半よりも後半にどれだけチャンスを作れるのかが、攻撃の評価基準となる。相手の警戒をかいくぐって生み出した決定機やゴールにこそ、価値を見出せるからだ。
そして後半の日本はチャンスを生み出した。それは間違いない。しかし、吹田スタジアムが立て続けに沸いたのは、残り時間が10分を切ってからだった。すでにこの時点で、日本は4人の選手を交代させている。一方のボスニア・ヘルツェゴビナは、88分まで2人しか選手を入れ替えなかった。
最終的に5人の控え選手を送り込んだ日本が攻勢を強めたとしても、本来ならば3人までしかカードは切れないのだ。終盤の猛攻は、差し引いて考えなければならない。
1本もシュートを打てなかった岡崎慎司。
ボスニア・ヘルツェゴビナ戦の日本は、12本のシュートを放っている。チーム最多は宇佐美貴史の3本だが、彼が記録したシュートはすべて前半だった。後半との落差は、シュート数からも読み取れる。同じく3本の清武も、そのうち2本が前半だった。
岡崎慎司が1本のシュートも打っていないのは、明らかにマイナスのシグナルだ。前線で攻撃の起点になる場面はあり、スペースメイクやDFの注意を惹きつけるランニングもあった。ただ、チームでもっとも頼りになるストライカーにシュートシーンが巡って来ない状況で、攻撃に及第点をつけられるはずはない。今回のボスニア・ヘルツェゴビナでエース格のミラン・ジュリッチが、2得点をあげたのとはあまりに対照的だ。