サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
DFとして闘莉王を超えるゴールも……。
吉田麻也、ブルガリア戦後の落胆。
posted2016/06/06 11:15
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph by
Takuya Sugiyama
ヒーローに、笑顔はなかった。
6月3日、キリンカップ準決勝ブルガリア戦後の取材エリアでのことである。DFながら2ゴールを決め、7-2の大勝に大きく貢献したはずの吉田麻也の表情は、硬かった。唯一、白い歯を見せたのは、話題の長友佑都による「アモーレ」発言について聞かれたときのみ。
「やっぱりイタリア語っていうのが、良かったですよね。英語で『マイ・ハニーです』と言ったら、滑っていただろうから」
これで報道陣を笑わせた後は、すぐにまた表情が締まる。もちろん大きな要因のひとつは、2失点したことだろう。チームは快勝しても、DFとして悔しくないはずはない。
「いらない失点だった。自分たちのミスから失点を招いたし、そういうところの甘さがまだまだ足りないところかなと思います」
プロになって初の1試合2ゴール。
とはいえ、自身がプロになって初めての1試合2ゴールである。38分にショートコーナーから長谷部誠のクロスを森重真人が折り返し、それを頭で押し込んだ。53分にはCKの流れから前線に残り、清武弘嗣のクロスを右足で流し込む。いずれもシュート自体の難度は低かったものの、クロスに対してボールウォッチャーになるブルガリア守備陣の悪癖を見抜いたポジショニングが光った。
しかも会場は、かつて名古屋でプレーした思い出の地・豊田スタジアム。3~4年前、日本代表に定着したばかりの頃の彼ならば、きっと試合後の表情はもっと明るかったはずである。
でも、彼は笑わなかった。ハリルホジッチ監督が就任してからは12試合の出場で5得点と、ハイペースでゴールを積み重ねているが、これに関して聞いても、冷静に分析した。