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今季のNBAには一見の価値がある。
カリー&カーが起こした「革命」とは?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAFLO
posted2016/05/18 17:00
バスケットボールに忠実であれ。バスケットボールに対する愛のため、ゲームに対する情熱のために。
ワン・オン・ワン偏重のトレンドが変わった。
NBAは選手たちが力を証明するリーグである。かつては1対1、「ワン・オン・ワン」の勝負で試合の行方が決することも珍しくなかったし、ファンもそれを求めていた。
しかし、ウォリアーズはこのトレンドを変えた。素早いパス回しによってフリーの選手を作り、得点力をアップさせる。もちろん、カリーやトンプソンのようなシューターがいるからこそ可能な戦略だが、このチームはグリーン、ハリソン・バーンズ、アンドレ・イグダーラら、他の選手たちも3ポイントを決める能力がある。
フリーの選手が3ポイントを打つ瞬間の期待感、そして決まった時のエクスタシーといったら……。
このワクワクする感じこそ、今のNBAがエキサイティングな理由である。
セルフィッシュな選手は、時代遅れになる。
カリーはテクニックと正確性でスーパースターになった。
スティーブ・カーは就任1年目でNBAを制し、2シーズン目でさらにチームを熟成させ、73勝というとてつもない勝利を積み上げた(シーズン序盤、腰の手術のためチームを離れていたが、その間はアシスタントのルーク・ウォールトンが素晴らしい仕事をした。彼は来季からレイカーズのヘッドコーチになる)。
カーは戦略、そしてエンターテインメントの面で「革命」を起こしたのだ。そしていまや、このウォリアーズのスタイルがNBAのスタンダードになっている。
カンファレンス・セミファイナルで敗れたものの、サンアントニオ・スパーズも同じような戦略を採用していた。アメリカの解説者の言葉を借りれば、
「ウォリアーズとスパーズは双子みたいなものだ」
といったところだ。
「チーム」で戦うことが出来る集団が、勝ちを積み重ねる。
2000年代はアレン・アイバーソンなど、自分から攻めるスタイルの選手が中核にいた。これから「セルフィッシュ」、わがままな選手は、時代遅れになるだろう。実力もさることながら、パスやスポットライトをシェアする感覚が重要になってくる。