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今季のNBAには一見の価値がある。
カリー&カーが起こした「革命」とは?
posted2016/05/18 17:00
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
AFLO
物足りない。
もっともっと今季のNBAは、日本で注目されるべきではないだろうか?
地上波のスポーツニュースは、一部の番組を除いてはスルーの状態。プレーオフのカンファレンス・ファイナルを迎えたいま、見逃す手はないのに。
個人的な体験でいえば、こんなにNBAが面白く感じるのは、マイケル・ジョーダンやパトリック・ユーイングらが活躍していた1990年代以来である。
しかし、ゲームの中身が違う。'90年代よりもはるかにスピーディで、エンターテインメント性に満ちている。
その中核にいるのが、2年連続でMVPを獲得したステフィン・カリー(ウォリアーズ)だ。
今季、ウォリアーズは73勝というNBAのシーズン最多勝記録をマークしたが、シーズン402本の3ポイントシュートを決めたカリーのパフォーマンスには、毎試合、裏切られたことはない(もちろん「402」は、NBA記録ね)。もはやハーフコート付近からのブザービーターは珍しくないほどだ。
もしもカリーが不調でも、クレイ・トンプソン、ドレイモンド・グリーンらのオールスター・メンバーが主役を取ってかわる。本当にウォリアーズのバスケットは面白い。
ヘッドコーチがカリーに話した「パスの数」。
ではなぜ、ウォリアーズのバスケットは魅了的なのか。
鍵はパスの「数」にある。
2014年、ウォリアーズのヘッドコーチにスティーブ・カーが就任してから、チームのバスケットは変わった。昨年9月、東京にやってきたカリーにインタビューした時、彼はこう話していた。
「コーチは1試合あたりのパスの本数が、325本から350本通れば、ウォリアーズが勝つ確率が高くなる――と言ったんだ。驚いたよ。コーチが来るまでは、自分たちがどれだけパスを回しているかなんて、意識したことはなかったから」