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“重し”高橋秀人と“戦う”水沼宏太。
2人が甦らせたFC東京、上海を圧倒。
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2016/05/20 10:30
鳥栖時代から水沼宏太の戦う姿勢は際立っていた。父はあの水沼貴史氏だ。
中盤の“重し”に指名された高橋秀人の仕事。
戦う気持ちや負けられないという意地が、FC東京のテンションを高めた。しかしそれだけではない。戦術的にも、彼らは整理された姿を見せた。
攻守で中途半端な戦い方から、ここ数試合は脱却しつつある。そのきっかけとなった、ある変化と選手が存在する。
これまでシーズン開幕以降、システムを4-4-2で戦い続けてきたが、ここ数試合は4-3-3に変更している。実質は前線にセンターFWを1枚置き、サイドのアタッカーは守備の場面では低い位置に下がる4-1-4-1のような形だが、肝は中盤にアンカーのポジションを新たに置いたこと。
DFラインの前で門番のように構える守備的MF。チームにこの“重し”が生まれたことで、「一度、まずは守備から試合に入るという考えでいこうということになった」(森重)と、戦い方が整理されたのだ。
その“重し”に起用されたのが、高橋秀人。ザッケローニ元日本代表監督時代には、代表にも名を連ねたMF。ヘディングに強く、戦術理解度も非常に高い高橋の存在が、FC東京のサッカーに落ち着きを取り戻させた。
柔軟に相手に対応しつつ、ハードに当たる。
上海上港戦でも、彼の柔軟さとハードさの両面が際立った。
相手のトップ下にいるテクニシャン、コンカを監視しながらも、うまく周りの選手を動かして他の敵を制していく。もちろん自らも中央エリアのスペースを消すという、アンカーとして大前提の仕事をこなしている。さらに左右両サイドの味方をフォローすべく、バランスを見て動くプレーも地味ながら効いていた。
そして、球際でも激しさを見せた。ガツンと音がなるような競り合いを厭わず、さらに一度力負けしたとしても、すぐに相手に二度、三度としぶとく追いすがる。それは、どんどん敵からボールを絡めとっていく“掃除役”という表現にピッタリの仕事ぶり。水沼の2点目の場面も、実はフィフティフィフティのボールを高橋がヘディングで競り勝ち、味方に落としたところが起点となっていた。