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“重し”高橋秀人と“戦う”水沼宏太。
2人が甦らせたFC東京、上海を圧倒。 

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西川結城

西川結城Yuki Nishikawa

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photograph byJ.LEAGUE PHOTOS

posted2016/05/20 10:30

“重し”高橋秀人と“戦う”水沼宏太。2人が甦らせたFC東京、上海を圧倒。<Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTOS

鳥栖時代から水沼宏太の戦う姿勢は際立っていた。父はあの水沼貴史氏だ。

4月は戦術も戦う意識もドン底だった。

 戦前の予想では、FC東京の苦戦は必至。そんな見立てが大勢を占めたが、気概にあふれた戦いぶりに加え、戦術的にも上回ったJクラブが第1戦をモノにした。

 試合開始から攻守で積極的な姿勢を見せ、上海上港を圧倒していった。特に前線、中盤で繰り広げられた球際の争いで、相手に一歩も譲らず激しく競り合うプレーは出色だった。

 FC東京は4月、公式戦5試合勝利なし(1分4敗)とドン底状態に陥っていた。その時期は攻守で非常に中途半端な戦い方が目立ち、果敢に攻めに出るリスクを取るでもなく、またはしっかり守るという割り切りが見られるわけでもなく、常に消化不良なパフォーマンスとなっていた。

 そんな中、5月初めのACL・ビン・ズオン(ベトナム)戦を前に、選手たちはミーティングを行った。戦術的に統率が取れていない状況の中、実際にプレーする立場の選手たちが再度戦う意識を確認。

 さらに、相手よりも走り勝つという、現代サッカーの根本的要素を見つめなおした。それはメンタル面を立て直すことにつながり、ベトナムに移動後は城福浩監督も選手と1対1で話す機会を設け、チームは再び前を向き始めた。

チームの姿勢を体現する、新加入の水沼宏太。

 34度の高温多湿の中で行われたビン・ズオン戦を勝利し、ACLラウンド16進出を決めると、この上海上港戦を迎えるまでの公式戦3試合は2勝1分と浮上モード。「とにかくもう一度サッカー選手としての基本に立ち返って、相手より戦う、走るという意識を共有できた」と主将の森重真人も要因を語っている。

 激しさを取り戻したFC東京は、体格とスピードで上回る上海上港にも真正面から立ち向かった。プレーでも気持ちでも負けない。そんなチームの姿勢を特に表現していた選手が、水沼宏太だった。

 今季、鳥栖から加入したサイドアタッカー。相手に走り勝つサッカーが魅力の鳥栖において、屈指の走力と体力を誇った水沼。FC東京に加入後、テクニックやスピードに長けた選手が周囲に多い中で、「自分がチームにもたらせるものはあると思う」と、献身性を切らさずに戦ってきた。

【次ページ】 森重に『お前が蹴って』と言われたFK。

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