プロ野球亭日乗BACK NUMBER
ホームを跨いでいたら全部セーフ!?
コリジョンルールの運用法を考える。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/05/13 10:30
初のルール適用でセーフになったが「タイミングは完全にアウト」と淺間は自分の判断を反省していた。
「意図的に走路を妨害した明白な証拠」を求めるMLB。
実は'14年シーズンから導入したMLBでも最初の1年間で本塁上のクロスプレーに関するビデオ判定が92回あり、その内の11回で判定が覆った。要はどこからどこまでが違反なのかがまだまだ周知徹底されておらず、ちょっとでも危ない場面では必ずビデオ判定を行っていたということなのだろう。
そのため同年の9月には、MLBの運営部門の責任者であるジョー・トーリ元ヤンキース監督から「捕手がボールを持たずにブロックしていたとしても、意図的に走路を妨害した明白な証拠がない場合には、セーフにしてはならない」という通達が出されている。そうして'15年7月以降は「捕手の左足がファウルラインに入らず、ライン上にあるときには走路を空けている」という具体的な解釈が規定された。
要は守備側が意図的に走路を妨害しない限り、アウトがセーフに覆ることはないという法の精神が徹底されたわけだ。
原口も高橋も、妨害の意図はないように見えた。
しかし今の日本のルール解釈では、タックルの禁止を前提にはしているが、むしろ守備側の走路妨害、ブロックの禁止に主眼がいきすぎているきらいがある。とにかく杓子定規に守備側が少しでも走路に入って走者と接触したらコリジョンルール違反、タイミング的には完全なアウトでも、判定はセーフに覆ってしまっている。
実際に阪神の原口のケースも、返球のバウンドに合わせて後方に下がり、本塁プレートの後方でボールを受けて覆いかぶさるように走者にタッチしている。ただ厳密にいえば、走者の小林の足が本塁に入るスペースは十分にあったように見えた。
西武の高橋の場合も、マウンドから走りこんで本塁を跨ぐようにボールを受けた結果、走りこんできた走者と折り重ってタッチをしているが、一連の流れのプレーであり意図的に本塁を塞ぐためのものではないのは明白だ。そもそも、投手が体を張って走者の走塁を妨げるというのは考えづらい。