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ホームを跨いでいたら全部セーフ!?
コリジョンルールの運用法を考える。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2016/05/13 10:30

ホームを跨いでいたら全部セーフ!?コリジョンルールの運用法を考える。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

初のルール適用でセーフになったが「タイミングは完全にアウト」と淺間は自分の判断を反省していた。

危険なプレーを未然に防ぐために作られたルール。

 ご存知のようにこのルールが作られるきっかけとなったのは2011年5月25日、メジャーリーグのサンフランシスコ・ジャイアンツ対フロリダ・マーリンズ(現在はマイアミ・マーリンズ)戦の本塁上でのクロスプレーだった。本塁に突っ込んできたマーリンズのスコット・カズンズ外野手がジャイアンツのバスター・ポージー捕手に激しいタックルを浴びせ、ポージーが左下腿の腓骨骨折と左足首の靭帯断裂という選手生命を脅かされる重傷を負った。

 それまでは、本塁でブロックして待ち構える捕手に対して、走者が激しくタックルをかけるのは当たり前、むしろ野球の1つの名物のような光景になっていた。ただ、この事件をきっかけにプレーの危険性が論議されるようになり、本塁上でのタックルの禁止とボールを持っていない捕手は走者の走路を空けることを義務付けたコリジョンルールが決まり、MLBでは翌'14年から導入されることとなった。

 日本でも2013年5月12日のヤクルト・阪神戦で阪神のマット・マートン外野手のタックルを受けたヤクルトの田中雅彦捕手が左鎖骨を骨折。マートンはそれまでも度重なる激しいタックルでトラブルを起こしていたこともあり、改めて本塁での激突プレーの是非が論議され、結局MLBから2年遅れて今季から正式導入が決まったわけである。

このルールは、何が目的だったのか?

 こうした流れを見れば明らかなように、コリジョンルールの土台にあるのは、意図的で、悪質な本塁上での接触プレーの回避である。それがこのルールの立法の精神なのである。

 そのためにまず走者に対してはタックルの禁止を義務付けた。そして走者のタックルを禁止する代わりに、本塁への走路を保証することにしたわけだ。実は、守備側は必ず本塁の一角を開けて走路を空けていなければならないという規定は、野球規則7・06の付記に以前からあった。

 今回のコリジョンルールではこのルールの徹底化の過程で、例えば守備側は本塁への返球を待つ際には両足共にホームプレートの前側に置いて立つことが原則とされて、体ごとタッチにいくことやホームを跨いで返球を待つことはブロックとみなされることになった。

 同時に、これまでは本塁打の判定だけに採用されていたビデオ検証を本塁上のクロスプレーでも採用して、正確な適用を図ることになったわけである。

 その観点からすれば、確かに高橋の事例も原口の事例も、ルールに抵触していることになる。ただ1つだけ考えなければならないのは、このコリジョンルールが何を目的に作られたものか、という立法の精神なのだ。

【次ページ】 「意図的に走路を妨害した明白な証拠」を求めるMLB。

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