“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
FC東京のユース世代は急成長中!?
U-23チームがJ3参戦した好事例。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2016/05/10 11:30
再三にわたって見事なドリブル突破を見せていたFC東京の久保。15歳ながら海外経験で高まった注目度はすでにトップチーム並だ。
選手、監督それぞれの立場で、この制度を高評価。
翌日、ニッパツ三ツ沢球技場で行われたJ3リーグ第8節のY.S.C.C.横浜戦。
U-23のチームにあって、岡崎がスタメン、ベンチメンバーの5人全員がU-18の選手という風景になった。
スタメンにはムリキ、ハ・デソン、吉本一謙などトップのスタメンクラスの選手が出場。試合こそ0-1で敗れたが、後半途中からMF内田宅哉(鹿島ユース戦で89分間出場)、生地慶充(同フル出場)、FW松岡(同76分間出場)の3人が出場し、経験を積むことは叶った。
「J3は僕の中で良い刺激になっていて、U-18と併用しながらプレーできるのは、自分にとって凄く新鮮でやりがいがあるんです。U-18のチームでは自分が攻撃の組み立てで起点を作ることをイメージしてプレーしていて、J3ではチームに合流してそのまま試合という場合が多いので、連携というより、個で戦えないといけない。そこで球際だったり、1対1の強さを感じながらプレーできるので、より個が鍛えられると思います」(生地)
選手の言葉を聞くと、FC東京の取り組みは「育成」という観点から考えるととても好循環にあるのがよく分かる。
「U-18のチームをもっと大人のサッカーに近づけたいと思っています。たとえば、僕は常に良い準備をしている選手を使うようにしている。その選手が活躍すれば、U-23に行った選手が帰って来ても、逆にU-18で居場所が無くなることも今後あるかもしれない」(佐藤監督)
「大事なのは『グラウンド力』。真剣勝負のゲームをたくさん経験させることで、若い選手はどんどん伸びていく。例えば翌日にU-23の試合が控えていても、(U-18監督の佐藤)一樹にはU-18の試合で『90分使っても良い』と伝えてある。U-23で数分しか出られなかったり、出番の無かった選手がU-18で試合に出られなかったら本末転倒になりますから」(安間監督)
才能ある若手が、トップチームに到達すれば……。
こうして生まれた好循環は、U-18の下級生たちにも意識の面で変化をもたらしている。高校1年生の平川はこう将来を思い描く。
「まだ1年生ですが、どんどん上に絡みたい。早く自分がチームの中心になりたいんです。J3に何人も先輩が行っているので。だからこそ、自分がチームの軸に早くならないといけない。来年にはJ3で(レギュラーとして)プレーすることは目標の1つです」
下の世代からの突き上げが、U-18、U-23のレギュラー争いを加速させていく――。
この好循環が、トップチームのレギュラー争いをも加速させた時、本当の意味でこの取り組みが価値あるものとなる。筆者はこの好循環の向かう先を、これからも取材して行こうと思っている。