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クロップとトゥヘルの決定的な「差」。
リバプールは何故大差を覆せたのか。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2016/04/15 18:50
ドルトムントのファンは、かつてこの男がいかに頼もしかったかを思い出していたことだろう。
リバプールのファンは、これからも逆転を信じ続ける。
実はクロップも、2008年にドルトムントの監督になるまでのキャリアはトゥヘルと同じようなものだ。ドルトムント就任当初のクロップも、ホーム&アウェーで行なわれるヨーロッパの戦いに当初は苦しんでいた。
クロップが欧州カップ戦に参加した'10-'11シーズンのELではグループ3位。'11-'12シーズンのCLでは、グループ最下位に終わっている。欧州カップ戦の戦いは、それほど特殊なものなのだろう。
EL準決勝以降の戦いを経験できないのは、トゥヘルにとって悔やまれるものとなった。しかしここでの経験は彼の血となり、肉となる。ヨーロッパの舞台でのし上がっていくためには、そうやって経験を積み、歴史を作り上げていくしかないのだ。
試合後の祝勝会が終わったあと、リバプールのキャプテンマークを巻いていたミルナーが、ロッカールームへの通路の手前でユニフォームを脱いだ。
そして、その通路の近くの席で観戦していたファンのなかで、最も幼い少年のファンに、ユニフォームをプレゼントした。あの少年はこの試合を一生忘れることはないだろうし、逆境に立たされても、いつだって逆転劇を信じて応援を続けるだろう。
それこそがリバプールの強みであり、歴史なのだ。
史上まれに見るエモーショナルな試合の勝敗をわけたのは、そんな歴史と経験の差だったのだ。