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クロップとトゥヘルの決定的な「差」。
リバプールは何故大差を覆せたのか。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2016/04/15 18:50
ドルトムントのファンは、かつてこの男がいかに頼もしかったかを思い出していたことだろう。
リバプールには、CL決勝で3点差を覆した歴史がある。
リバプールも似た感覚を持っていた。前半は1点も奪えなかったものの、0-2で迎えたハーフタイムに、クロップ監督には手ごたえがあったという。
「ハーフタイムの雰囲気はむしろ良かったよ。実際、私はこの試合に満足していた。もちろんゴールが決められないことには満足できなかったが、戦い方には満足していた。だから選手たちにはこう話した。『今はTVの解説者をやっているようなリバプールの先人たちは、0-3でCL決勝のハーフタイムを迎えてから優勝しているんだぞ』と。そのときと状況が詳細に似ているというわけではないにせよ、そうした試合にすることは可能だったし、我々はトライすべきだった」
そして後半開始早々の3分、オリジがディフェンスラインの裏へ抜け出して、スコアを1-2とした。それまで沈黙していたアンフィールドのファンたちも、これで息を吹き返す。
しかし、よく考えてみて欲しい。
この時点で、アウェーゴール・ルールを考えれば、リバプールが勝つためにはさらに2点が必要な状態だった。普通のスタジアム、普通のサポーターならば、逆転に向けたムードが漂い始めるのは、せいぜい1点差になってからだろう。
しかし、リバプールにそんな常識は当てはまらない。彼らにとって、2点というのは十分に手が届くものなのだ。
フンメルス「もっとボールを支配するべきだった」
それでも、後半12分にドルトムントはロイスが抜け出して1-3とした。リバプールは再び、3点が必要な状況に追い込まれた。
しかし、ドルトムントのキャプテンであるフンメルスは、試合後に後悔を口にした。
「これは僕たちのミスだ。3点目をとったあと、僕らはもっとボールを支配するべきだったんだ。でも受身になってしまったし、集中力もアグレッシブさも欠いていた」
そしてトゥヘルにとっても、あれだけ戦術面で規律を求めてきていながら、リードを奪ってからの戦い方について選手たちに徹底できなかったのは、致命的なミスでもあった。
そして、ロイスのゴールで一度はトーンダウンしたリバプールのサポーターたちも、後半21分にコウチーニョのゴールが決まると、再び息を吹き返す。
彼らには逆転劇を信じるだけの歴史と経験がある。