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クロップとトゥヘルの決定的な「差」。
リバプールは何故大差を覆せたのか。 

text by

ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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posted2016/04/15 18:50

クロップとトゥヘルの決定的な「差」。リバプールは何故大差を覆せたのか。<Number Web> photograph by AFLO

ドルトムントのファンは、かつてこの男がいかに頼もしかったかを思い出していたことだろう。

クロップを相手に感情的になり過ぎた1stレグの反省。

 彼が悔いていたのは、1-1で終わったリバプールとの1stレグで、チームを上手くコントロールできなかったことだ。チームのパフォーマンスががらっと変わってしまったのは、昨シーズンまで7年間指揮をとっていたクロップ監督がドルトムントに帰ってくるという、エモーショナルな出来事に左右されたからだと考えていたのだ。1stレグのあとに、トゥヘルはこう話していた。

「試合前に、あまりに多くのことが我々の頭の中を支配してしまった。それで緊張感が高まりすぎて、いつものような戦いが出来なかった」

 リバプールとの2試合の間には、リーグで宿敵シャルケとのダービーがあったにもかかわらず、リバプール戦からスタメンを8人も入れ替えて臨んだのも、その点が懸念されたからだ。シャルケ戦の前に、トゥヘルはこう宣言していた。

「フィジカル面だけを考慮するのではなく、メンタル面を考慮したうえでメンバーを入れ替える」

 トゥヘルが名監督と呼ばれるようになったのは、戦術面の指導力を武器したからだった。モチベーターとして選手のメンタル面をコントロールする能力に長けているのはクロップの方なのだが、トゥヘルは、自らの強みとは異なるアプローチで試合に挑んだのだ。

2点のリード、しかし香川には懸念があった。

 選手のハートを刺激して攻撃的に戦おうとする狙いは、一見成功したように見えた。香川は、狙いをシンプルにした良い心理状態で試合に入れたという。

「僕たちが勝ち抜ける条件は勝つか、アウェーで得点を獲って引き分けるかでしたが、そこまで深く考えずに、勝つことを意識していました。」

 ドルトムントは前半9分までにカウンターから2点のリードを奪い、トゥヘルの狙いは実を結びかけていた。

 ただその一方で、香川はある懸念を感じていた。

「最後のところで相手が外してくれていましたが、僕たちの守備が崩される場面も多かったので、嫌な雰囲気はありました」

 守備が機能しないことが、攻撃にも悪影響を与えていた。

「相手はチャンとミルナーのダブルボランチだったんですけど、そこへ誰が行くのか。相手を捕まえきれなかったところもたくさんあった。攻撃はやはりカウンターしかなかった」

【次ページ】 リバプールには、CL決勝で3点差を覆した歴史がある。

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香川真司
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