プロ野球亭日乗BACK NUMBER
野球賭博の自己申告者はいるのか?
処分軽減ともう一つ、必要なもの。
posted2016/04/15 11:00
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
KYODO
「答えは決まっているのではないか」――そんな話を耳にした。
日本野球機構(NPB)の熊崎勝彦コミッショナーは4月4日、野球賭博問題の全容解明のために「自主申告」を促す特別措置を実施することを発表した。この特別措置では野球賭博への関与を自主的に申告した場合には、無期失格処分を下されても1年後に真摯な反省が見られれば、野球賭博常習者や反社会勢力との関係を断つことを条件に、処分が解除されるというものだ。
処分軽減の可能性を示すことで、申告しやすい環境を作るのが狙いで、熊崎コミッショナーは「仮に悩んでいる選手がいた場合、できる限り言いやすい環境を整えてやることが必要」と説明している。
これで自主申告する選手がいるのか?
しかし、これに対して球界からは「果たしてこれで自主申告する選手がいるのか」という反応も多い。
例えばここで自主申告したとしても、球団との契約は解除されて、復帰できたとしても新たな契約を結べる保証もない。またその1年間の収入の確保やトレーニングする時間、場所、経費をどう捻出するのか。そういう様々な復帰への障害を考えると、黙って逃げ果せるなら逃げ果した方がいいと考えるのではないか。1年間の失格処分というリスクを冒してまで自主申告できるような条件ではない、という声を聞くのだ。
そこで出てくるのが冒頭の話だった。
「答え」とはさらなる野球賭博関与者の名前である。
要はすでになんらかの形で関与者の名前が判明していて、その選手が名乗り出られる形を作ったのではないか、ということだ。選手にしてみれば、無期失格の可能性が高いのが、申告すれば処罰が軽減されるのだから必ず申告することになる。逆に言えばあらかじめ誰かを対象に処罰を軽減するために、制度が設定された可能性もあるという指摘だ。
果たして熊崎コミッショナーがどういう狙いで今回の措置を発表したのかは、判然としない部分もある。ただ、はからずも単なる厳罰主義ではなく、「自主申告」という制度を設けてでも、NPBとして復帰への道をどう開くかを示すことになった。