松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER

何度転んでも、タダでは起きない。
松山英樹、マスターズへの戦利品。 

text by

舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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photograph bySonoko Funakoshi

posted2016/03/29 10:40

何度転んでも、タダでは起きない。松山英樹、マスターズへの戦利品。<Number Web> photograph by Sonoko Funakoshi

2勝目をあげたフェニックスオープンの前の試合で、実は松山は予選落ちを喫している。失敗からのリカバリーも、彼の武器なのだ。

マッチプレーにも戸惑いがあったのでは?

 なぜ、そんな話をしているかと言えば、マッチプレーに対しても、似たようなことが当てはまるからだ。

 世界に挑み始めたころの松山は、最初はマッチプレーという形式にあまり慣れていなかった。2013年に初めてプレジデンツカップに出たとき、2014年に初めてマッチプレー選手権に出たとき、彼はマッチプレーそのものに戸惑っていた。

 だが、そのときも「慣れていません」「戸惑っています」とは言わなかった。そして2度のプレジデンツカップ出場と2度のマッチプレー選手権出場という経験の中で、彼はコツコツ地道にマッチプレーの戦い方を学び取ってきた。

 3度目の出場となった今年のマッチプレー選手権。松山がマッチプレーという戦い方に戸惑いを見せることはもはや無かったが、しかし彼は初戦でスペインのラファ・カブレラベリョに1ダウンで敗れた。

「ショットは良くなっている。手ごたえはいい。でもアップにつながらない」

 いいショットを打ったつもりでも、それが結果につながらない悔しさ、もどかしさ。だが、その中でも松山は「何か」を見出そうと、もがいていた。

 マッチプレー選手権は昨年大会から形式が大きく変わり、従来の勝ち抜き戦方式から、3日間の1次リーグ総当たり戦を経て土日の決勝トーナメントへ進む新方式になった。

 今年はさらなる変更が加わり、1次リーグの日々の対戦に「引き分け」が設けられたり、3日間を終えてグループ内でトップが並んだ場合の「プレーオフ」が設けられたり。つまり、松山は3度目の出場とはいえ、彼が挑んだプレー方式は結果的には毎年異なるものになった。

駆け上がらんとする選手にとって、荒波は不可避。

 しかし、若くして世界の舞台を踏む選手、スターダムをハイスピードで駆け上がろうとしている選手にとって、激動の荒波は不可避だ。次々に押し寄せる荒波に飲まれないよう、必死に踏ん張るしかない。と同時に、その荒波の中を泳ぎ切り、抜きん出るための自分なりの方法も見つけ出さなければならない。

 それはたとえるなら、目が回るほど早いスピードで回転しながら同時に高くジャンプするような、異なる2つのベクトルを同時に操るような、そんな高度な合わせ技。

 その技を成し得るためには、「やってやるぜ」と思えるような糧が必要になる。だから彼は、どんなときも糧となる「何か」を見つけようとする。

 このところずっと悩んできたショットの感触が今週はこれまでとは「全然、雰囲気が違う」。いきなり敗北を喫した初日でさえ、そうやって彼は光を見出そうとしていた。

【次ページ】 勝敗と同時に、もう一つの努力も忘れない。

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