ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
“チーム松山”、3度目のマスターズ。
キャディとトレーナーが語る関係性。
posted2016/04/04 10:30
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
AFLO
スター選手たちと気さくに声を掛け合い、握手を交わす。プレーを終えて「きょうはどうだった?」と訊ねられ、渋い表情だけで返す。
松山英樹の世界では、そんな光景がちっとも珍しいものでなくなってきた。
テキストメッセージをやり取りし、何人かの一流プレーヤーとは連れ立って食事する機会もある。そういった時にはまだ、傍らに通訳が必要だ。しかしだからこそ余計に、松山は周囲と“言葉以上の何か”で結びついているとも感じられる。数字の上でもスター選手、一流プレーヤーと肩を並べた松山だが、彼は近年、世間的な評価以外の意味でもその仲間入りを果たしてきた。
互いを尊重しあう関係性を築くためにはゴルフの腕だけではなく、オープンマインドな姿勢を知ってもらう必要がある。
とはいえ、いまだに松山は基本的にシャイだ。社会的地位がどんなに高い人と対面しようが、通り一遍のあいさつをしたあとの言葉がなかなか続かない(分け隔てのない付き合い、という意味では魅力的なのだが)。
では、戦友たちの心をどう溶かしていったのか。松山はその問いに「ダイスケさんの影響が大きい」と答える。ダイスケさんとは、連れ添って3年半になる進藤大典キャディのことだ。
世界的名参謀から情報収集を欠かさない進藤キャディ。
アメリカ全土にあるステーキハウスのチェーン店。
普段松山のバッグを担ぐ進藤キャディにとっては、そんなありふれたファミリーレストランでの食事が、年に何度か心躍るものになる。テーブルを挟んだ向こうに座るのが、彼が尊敬して止まないスティーブ・ウィリアムス氏だからだ。
ウィリアムスは、かつてタイガー・ウッズと名コンビを組んだプロキャディ。現在はアダム・スコットが、メジャーなどここぞという試合で起用する名参謀として知られている。2013年のプレジデンツカップで、松山とスコットがダブルスのコンビを組んだ縁を発展させ、メールのやり取りからコースの外で食事をする関係になった。