視線はすでに2週間後のマスターズへ。

　来週のヒューストン・オープンには出場せず、その翌週は、いよいよ今季最初のメジャー、マスターズに挑む。

「この2週間で、いいものが見つかったので、それを自分でどこまで調整できるかです。課題をしっかりやって、その結果がオーガスタで出せるといいけど」

　そう言った松山の表情からは、すでに悔しさが消え、彼の視線はオーガスタへ向き始めていた。

　振り返れば、そうやってすぐに気持ちを切り替えることにも最初のころの松山は決して慣れてはいなかった。アマチュアで出場した2度目のマスターズでは悔しさが大粒の涙に変わり、米ツアーに来た1年目は惜敗の無念が怒りに変わり、そうやって歩んできた中で、彼は2つのベクトルを同時に操る高度な技をなんとか身に付けつつある。

　勝てば、すべてが手に入る。負けても「何か」だけは持ち帰る。転んでも絶対にタダでは起きない不屈で貪欲な精神。

　そんなふうに強くなり、まだまだ強くなる松山だからこそ、今年のマスターズに期待ができる。