松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
何度転んでも、タダでは起きない。
松山英樹、マスターズへの戦利品。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2016/03/29 10:40
2勝目をあげたフェニックスオープンの前の試合で、実は松山は予選落ちを喫している。失敗からのリカバリーも、彼の武器なのだ。
勝敗と同時に、もう一つの努力も忘れない。
2日目はデンマークのソレン・ケルドセンに4&2で圧勝。3日目は米国のケビン・キスナーに3&2で快勝。しかし、それでも今年の新方式の下では松山の決勝トーナメント進出はならなかった。
「初日に負けた時点で、そうなる感じはあった。そんなに望めないと思っていた」
すでに予選敗退の覚悟はできていたということ。それならば、彼は何を糧に2日目と3日目のマッチに挑み、勝利できたのか。そう考えたとき、回転しながらジャンプするような彼の高度な合わせ技が見て取れた。
松山は2日目も3日目もマッチで勝つために全力を尽くし、実際に勝利した。2勝1敗へ持っていけば、同グループ内のカブレラベリョと並んでプレーオフに持ち込める可能性が小さいながらも残っていた。松山はその小さな可能性を目指し、必死に戦った。
だが同時に彼は、マッチの勝敗や決勝進出の可否とは別に、自分だけが感じ取ることができるショットの感触を研ぎ澄ますという努力も行なっていた。
「いい課題が見つかった。先週も今週も、いいものが見つかった」
「練習のときの感じが今までとは変わってきている」
予選敗退が決まり、ゴミ箱を蹴飛ばしてオースチンCCから去っていった選手もいた。だが松山がそうならないでいられたのは、彼が戦績以外にもう1つの戦利品を見つけたおかげだ。
前週のアーノルド・パーマー招待ではジェイソン・デイと初めて同組で回り、「いいものを見せてもらった。自分に足りないものが明確になった」。そして今週も「いいものが見つかった」。
見つけたものの正体は、先週も今週も明かさなかった。弱音も吐かないし、企業秘密も明かさない。それもまた松山のスタイルだ。だが「練習のときの感じが今までとは変わってきている。それは自分にとって、いい傾向かな」と言っていたから、きっとスイングに関する「何か」なのだろう。